ロボットが付加価値創出のための時間を提供する

――世間では「ロボットやAIが人間の仕事を奪う」ということで危機感を示す向きもあります。

三浦氏:これはinahoとしての考え方でもあるのですが、世界を変えるのは人であって、テクノロジーではないと思うのです。

 人の仕事を「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」の2つに分けて考えてみますと、後者の「やらなければいけないこと」にほとんどの時間が費やされていて、皆それが当たり前と受け止めていたというのが、これまでの仕事生活だったのではないでしょうか。

 一方で、ロボットやAIなどのテクノロジーによって「やらなければいけないこと」が自動化されていけば、人は「やりたいこと」にもっと時間を投じることができるようになる。そうなれば、人はもっと新しい価値を創造できるようになると思っています。

 農作業もこの2つに分けて考えることができます。農家にとって「やりたいこと」の一つは、アウトプットである収穫を最大化するための仕事、つまり、より良い作物をより多く収穫できるようにするための「栽培」です。一方、収穫作業は、どちらかと言えば「やらなければいけない」ことに属すると思っています。

 収穫作業にかかる時間を減らせば、「やりたいこと」である栽培にもっと時間を費やすことができる。そうなると農家さんの収入はもっと増え、新しいことにもっとトライできるようになります。つまり、農家さんはロボットやAIというテクノロジーを使うことで、より本質的な仕事に自分の時間を投入できるわけです。

――収入を伸ばすことになるので、テクノロジーは「敵」どころか、歓迎すべき存在になるということですね。

三浦氏:私個人の見方ではありますが、どんな仕事でも、「自分の仕事で生み出している本質的な価値とは何なのか」に注目して、そのための時間をどう確保するかと考えていけば、「テクノロジーが仕事を奪う」という見方に偏る傾向は減るのではないでしょうか。私はこの仕事に就いてから、「テクノロジーをうまく使うことで人はもっと本質的な生き方ができるようになる」と、さらに確信を持てるようになりました。

仕事内容はこれからも変化

――200人以上ものアグリコミュニケーターの採用計画を立てた理由は何でしょうか。

三浦氏:顧客を拡大しつつ、収穫ロボットのダウンタイムを極小化したいためです。収穫ロボットが故障して動かなくなると、それだけ農家さんの売り上げが減ります。これはロボットが収穫した量に連動するビジネスモデルを採用している当社にとっても売り上げに直結します。

 ロボットが故障したという通知を受けて、アグリコミュニケーターがいち早く駆けつけるためには、ロボットを使っている農家さんがいる地域を過不足なくカバーする必要があります。現在は佐賀県鹿島市の支店がアグリコミュニケーターの主要拠点となっていますが、今後は同じくアスパラやキュウリの産地が広がっている九州全域、四国、それから関東へと拠点を広げていく計画です。そうなると、農家さんのいるエリアを過不足なくカバーするように拠点を設置し、そこにはアグリコミュニケーターがいることが必要です。

 また、今後アグリコミュニケーターの仕事内容も変化していきます。例えば、先ほど話題に出しましたデータの活用です。取得したデータを活用して農家さんや自治体、流通会社に提案するような業務が増えてくる可能性があります。

 そうなると、今以上に幅広い経験やスキルを持った人材が必要になります。仕事の中身は今後、想定よりも大きく変化していくと見ています。