AI(人工知能)やロボットがどんなに発達しても、企画・設計、あるいは接客などの仕事は残ることだろう。特に美しさや楽しさを演出する、いわゆるクリエイターの仕事は、まさに人間だけが持ちうる発想力をダイレクトに生かすものと言える。

 ビジネスの現場における身近な仕事としては、Webサイトやスマホアプリの企画・デザインがその代表例だろう。通販や書籍・映画の閲覧はもちろん、飲食店や美容院の予約、タクシー手配においても、Webやアプリが「顧客の入り口」となりつつある。となると、Webサイトやアプリの使い勝手や美しさが、ユーザーへの訴求度を決める。つまりクリエイターの力量が、事業の売り上げを大きく左右するわけだ。近年、特にBtoCの企業においてクリエイターを重用する動きが始まっているが、産業界ではクリエイターの役割にますます注目が集まることだろう。

 ただ、クリエイターの仕事というと、「良い作品」を作り上げるために夜も休日も仕事に没頭する、という印象もありそうだ。時にはそうした局面も求められるだろうが、もしそのような状態がずっと続くとすれば、良い仕事をするどころの話ではない。

 官民による「働き方改革」が進んでおり、世界的に見てもSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・安全・ガバナンス)投資の広がりを背に、ビジネスに人権配慮の観点が求められつつある。「健康を害するような働き方はしてはならないし、他者に強いてもいけない」という認識が広がっていくことだろう。

 それでも、企業として品質が高いものを作らなければ、市場競争では勝ち抜けないのも真実である。つまり、企業は、社員の健康的な働き方を支えることと、社員の生産性・創造性を高めることという2つの要件を同時に満たすことが求められている。

 そんな中で、ネット広告大手のオプトは2016年前後から、クライアント企業向けの広告制作を手掛けるクリエイティブ部門の強化と業務改革を進めてきた。

 オプトは1993年に創業、インターネットビジネスの黎明期である1997年にネット広告事業に参入した。2000年には広告効果測定ツール「ADPLAN」をリリースして事業を伸ばし、国内三大ネット広告大手の一社という地位を確立した。2015年には当時34歳の金澤大輔氏が社長に就任。金澤社長の指揮下でエンジニアとクリエイターの積極採用を進めており、コンテンツを自社内で開発できる体制を急ピッチで整備中だ。

 クリエイティブ業務の改革を進めた結果、同社内比で業務の生産性が1.5倍に伸びたという。オプトのクリエイターチームは何に取り組んできたのか。

デジタル時代に合った教育を

写真左から、オプトでネット広告のクリエイティブ業務を管掌する橋本祐生氏(執行役員)。ディレクターチームを率いる伊藤弘明氏(ダイレクトクリエイティブパフォーマンス部部長)。デザイナーチームを率いる田渕温子氏(ダイレクトデザインプランニング1部部長)

 まずは、クリエイター人材の研修・育成だ。新人デザイナーや新任ディレクターが早期に先輩のサポートがなくてもクリエイティブ作業を進められるようにするために、教育コンテンツに工夫を凝らした。

 現場での教育研修やEラーニングをはじめとした教育コンテンツには、デジタル広告制作に欠かせない新しい知識やノウハウを載せた。例えば、デジタル広告ではポータルサイトやSNSといった媒体ごとに求められる広告の作り方が変わってくる。また広告効果がページビューやコンバージョン率といった数値でリアルタイムに計測できることも特徴だ。このようなデジタル広告ならではの制作ノウハウを伝えていく。