デザイナーが独り立ちするまでの期間を半年に短縮

 こうした一連の工夫により、様々な効果が表れた。まず一つは、人材の早期育成だ。例えばデザイナーなら、未経験者が「独り立ちした」と言えるスキルを備えるまでの標準的な期間を約半年に短縮できたという。「先輩デザイナーのサポートなしに業務が一通りこなせる人材を早期に育て上げられるようになった。これは忙しい現場では大きなインパクトがある」(田渕氏)。従来、オプト社内では1年程度は必要というのが共通認識だったという。

 クリエイティブ作業全体の効率も上がった。作業内容を定量的に把握しやすいデザイン業務を中心に調査したところ、取り組みを始めた2016年頃と比べて約1.5倍の生産性アップが図られたという。「総じて、クリエイティブ業務全体の安定性が増した。これは残業時間の削減など、いわゆる働きやすさの改善にもつながっている」(橋本氏)。

 「クリエイティブはどこまで行っても、人間が頭を使って、新しいものを作り続けるしかない分野」と橋本氏は語る。「だからこそ、人の力により新しいものが生まれる可能性が大きく広がっていると言える。クリエイターが想像力を駆使してアイデアを出していく、それを支える仕組みが大切だ」

 人の社会は常に変化する。そして各種の予測は必ずしも当たらない。

 そこから考えると「将来、人は何に心惹(ひ)かれるのか」は過去のデータだけで見えてくることはない。だとすれば、どんなにマシンが発達して自動化が進んでも、「人が何に心惹かれるのかを考え、形にする仕事」は、人間ならではの仕事として存続し続けるだろう。

 ならば、その仕事を支える仕組みをどうやって用意するのか……。オプト独自の取り組みに、「人」「テクノロジー」「働き方」の3要素が入り交じる企業の将来を垣間見た。

高下 義弘(たかした・よしひろ) 日経BP総研 客員研究員
高下 義弘

フリーランス記者/編集者。大学院修了後、1998年に日経BP社に入社。日経コンピュータ、ITpro(現・日経 xTECH)編集記者を経てフリーランスに。一貫して企業経営とテクノロジーについて執筆。2018年より11月現職。『人と仕事の未来2019-2028』(日経BP総研、2018)などを執筆。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。