広がるHR分野におけるテクノロジー活用

 働き方改革の一環で、テクノロジーを活用する企業が増えてきました。テクノロジーが活用され、働き方の柔軟性や効率が上がっている一方で、システム導入ありきで成果が出ず、運用されていないケースも散見されます。HRテックの功罪と成功させるポイントについて事例を元にお伝えします。

ビジネスチャットを導入して、愚痴だらけ?

 システム導入の際、ユーザーは様々なメリットや効果を期待して導入すると思いますが、それが活用されず、期待した効果が出なければ当然がっかりします。しかし、最近はそれよりももっと憂慮すべき事象も発生しています。働き方改革やES向上を目的に導入が進むビジネスチャットですが、我々が調査会社と協力し、取得したアンケートでは、導入した企業が目を覆いたくなるような調査結果が出ました。

グラフ1

 まず、仕事で会社が用意した有償ビジネスチャットを活用しているビジネスパーソン200人を対象にした調査で、導入しているビジネスチャットで同僚や会社、上司に対する愚痴や不平・不満を目にしたことがあると回答した方の割合が41%に上りました。

グラフ2

 そして、愚痴や不平・不満を目にしたことがあると回答した方のうち73%の方が、ビジネスチャットの導入によって、そうしたことを目にする機会が以前と比べて増えたと回答しています。

 会社は、ビジネスチャットでいつでもどこでも、どこからでも仕事ができ、コミュニケーションを円滑化することで、労働生産性を高めようともくろんで導入したり、コミュニケーションの活性化によってポジティブな連鎖を生み出し、ESを高めようという意図があって導入したりしていると思います。

 しかしながら、愚痴や不満を垂れ流しそのたびに通知が来て、それを見ている状態では労働生産性は決して高まりません。組織や同僚、上司への愚痴で埋め尽くされたチャット画面と対峙するなかでは、ESは下がり、エンゲージメント、ロイヤルティーは低下の一途です。

ベンダーの見せ方、販売手法にも問題がある

 では、なぜこのような事象が起こるのでしょうか。原因はそれぞれの組織で異なると思いますが、共通している課題について言及したいと思います。

 まず導入時点でメーカーと販売会社が分かれているケースにおいては、販売会社が「モノ売り」となってしまい、1ID/数百円の便利な道具を販売するという形態を取っていることが挙げられます。

 ユーザーは販売会社の持ってくる成功事例を自社と重ね合わせて、企業文化や抱える課題が違うにもかかわらず、成功した時のイメージだけを元に購買意思決定をしてしまいます。販売会社は売ることが最重要課題であり、1ID/数百円の安価なサービスの導入に、企業の課題を深くヒアリングして、その企業に合った提案を行うだけの労力もかけることができません。

 また、メーカーほど事例や提案実績もないため、往々にして、その企業に合った提案がなされないまま、導入の意思決定がされてしまいます。導入企業は他社における一部成功事例の青写真しか見せられておらず、導入のデメリットやリスクについて深く理解せずに運用を開始してしまいます。すると会社側が想像していなかった上述のような結果を招いてしまうのです。

 実際に問題が起こってから、ベンダー(メーカー)に相談してもITベンダーの多くは、1ID/数百円のサービスを薄利多売して成り立っているので、個社の事情に合わせたサポートまでは手が回りません。結果的に導入したが使われない、それどころか、導入したら想定もしなかったリスクが顕在化したという事態に陥ってしまうのです。