働き方改革は企業にとっての足かせなのか?

 エン・ジャパン株式会社が2018年9月21日に発表した企業の経営者・人事担当者を対象にした「働き方改革法案」についてのアンケート調査では、5割の企業が“働き方改革法案”で「経営に支障が出る」と回答したことが発表されました。

 これまでも企業における人事施策は“お上”からのお達しによって様々な影響を受けてきましたが、企業がメリットを見いだすことができなければ、ほとんどが形骸化し、「見せかけ」だけ「対外的に」だけで、社内から見ると上滑り、冷ややかな目で見られ、風化していくという末路をたどるケースを散々見てきました。経営トップや人事がメリットを感じ、自社課題に照らして取り組むメリットを感じなければ、継続的な施策の実施と働き方改革の成功は程遠いでしょう。

 今回は具体的な事例を元に企業にとってメリットを感じることができる働き方改革事例をご紹介していきます。

 いずれの事例も本を正せば、企業が課題に感じている「人手不足」「売り手市場の加速」を解決しうるかが共通項です。自社にとっての優先課題を解決できるもの、放置すれば将来的に大きな課題に発展するという意識があれば、取り組みの本気度も変わってきます。当たり前の話ではありますが、やはりこの点が最も重要なことなのでしょう。

若者の活躍

 今や、新卒採用市場は空前の売り手市場。若手の離職リスクも高まり、採用マーケットでは、第二新卒向けの媒体が急伸しています。

 当然、そうした流れは若手社員も認識しており、早いタイミングで離職を決めるハードルは、以前に比べて低くなりました。もはや企業はそうした若手社員のスタンスを嘆くのではなく、そうした時代だと認識し、対策を講じなければならないのです。若手社員が定着し、活躍してくれることは企業側にも当然メリットがあり、そうした観点での「若者の活躍支援」であれば、企業側としても本腰を入れて取り組むことができます。

 具体的には、若手が最もギャップを感じやすい配属後のOJTにメスを入れるというものです。新卒採用においては企業側も学生に選んでもらうために必死でアピールを繰り広げます。しかしながら、よい面ばかりを強調された企業を選び、いざ現場に配属されるとイメージとの違いやギャップを感じたり、これまではちやほやされていたのが、現場に出ると急に厳しいことを言われたりするなど、配属のタイミングが一つのターニングポイントになることは間違いありません。

 さらにそのタイミングでは、これまで接していた人事・採用担当者は遠い存在になってしまうケースが大半です。現場への気遣いから、人事が関わるのは配属前の研修までと線引きをしているからです。新人からしてみれば、「言われていたのと違う」となるのは当然です。

 そこで、人事がOJTにまで踏み込む、職場全体で育成する文化を作るという手法を取る企業が増えています。具体的には配属後もセーフティーネットの役割として人事が関わり、OJTをトレーナー任せで放置するのではなく、職場の所属長なども新人の育成を見守りながらトレーナーをフォローするという体勢を取るという育成スタイルに切り替えるというものです。

 導入当初は現場の反発もありますが、現場も若手の育成に困っているというケースも増えており、現場の負荷軽減や定着率向上という視点で話をすれば受け入れてもらえるケースが増えてきました。何より、「会社としてコストをかけて採用し、教育してセットアップした新人が早期に辞められては、たまったものではない」という経営層の課題意識があれば、現場に対して優先的に解決する課題ということで落とし込んでもらいやすくなります。育成スタイルを変えた企業においては、新人の離職ゼロを実現したり、3年以内の離職やメンタルを病んでの長期休職者の発生数が減少したりする効果がありました。