「復職率ほぼ100%」の中で新たな課題が浮上

 今回は、時代に合った産休・育休からの復職支援について解説します。

 日本では現在、産休・育休からの復職率は100%近くになったものの、復職後の定着・活躍にまで十分に対応できている企業はまだ少なく、新たな課題が浮上しています。短時間勤務制度などを利用して職場復帰した社員に対し、どのようにマネジメントするか、悩んでいる上司の方は少なくありません。子育て中の社員と他の社員との軋轢が発生してしまっているという声も多く寄せられています。

 出産、育児という大きなライフイベントを経て、価値観や人生観も変わるなかでの復職は、社員本人にとっても大変なことです。利用者の感情に寄り添った支援策が大切ですが、個々の家庭環境や職場環境も違うなかでベストな解決策がなかなか見いだせない企業も多いはずです。

休業中の社員への情報提供は最も有効

 まず復職のための有効な施策の一つとして、休業中の社員の方々への情報提供があります。事業展開の変化やそれに伴う業務の変更、あるいは人事異動など、最新の社内事情にキャッチアップできないことは、本人にとっても、また周囲の社員にとっても復職後の負担や摩擦の原因になるからです。

 提供すべき情報と自身で探すべき情報の線引きは必要ですが、提供すべき情報については、できるだけ当該社員たちのニーズに極力合った形で提供すべきです。

 EDGEでもクライアント企業に対し、アンケート調査を実施することを推進しています。一部のクライアント企業では、エアリーダイバーシティのアンケート機能を活用して、会社から提供してほしい情報についての意見を取得しました。複数企業からの集計から、以下の情報に対するニーズが高いことが分かりました。

・人事異動情報
・業務上のルールやシステム変更情報
・復職後の先輩が困ったこと/解決方法
・保育園情報
・復職後の先輩の働き方

 もちろん、企業によってそれぞれの項目の回答率には違いがあります。ぜひ自社独自のニーズ調査をされることをお薦めします。

復職社員のロールモデルを選定するうえでの留意点

 産休・育休からの復職支援に、職場の社員の協力を得ることも重要です。過去に職場復帰を経験した女性社員たちを中心にワーキンググループをつくり、課題検証からスタートする企業も最近増えてきました。人事部門だけで考えた施策が上滑りしないために、人事以外に所属する方を検討チームに入れることは非常に効果的です。

 また、先輩女性社員にロールモデルになってもらうという施策を取り入れている企業も多くあります。上記のアンケート結果にもあったように、復職後の先輩女性社員が自社においてどのように働いているかは、大変参考になるからです。

 ただ、ここで一つ気を付けたいのは受け手側の印象です。人事主導でロールモデルを選定した場合、ともすると「会社としてこういう働き方をしてほしい」「これこそがマネジメントしやすい女性社員の見本だ」といった意図が見え隠れしてしまいます。育児と仕事に関する考え方やバランス、価値観は人それぞれ違うはずです。せっかくロールモデルを取り入れても、会社の考えを押し付けるような見せ方をすると、途端に社員たちの温度感が下がってしまいます。

 復職後の働き方を押し付けられたと思われないよう、様々なパターンのロールモデル候補を挙げることが必要です。本人たちに能動的にロールモデルを選んでもらい、部分的に参考にしてもらうなど、納得感のある施策の運営を心がけたいところです。