「治す」のではなく「付き合っていく」

 「双極性II型障害の場合は、患者の教育のためにリワークプログラムのある病院に転院させるとよい」とお伝えしました。

 なぜ、患者に教育が必要なのでしょうか。

 実は、双極性II型障害は、うつ病のように「病気を治す」のではなく、「自分の気分の波を知り、コントロールする」という方法を学び、上手に付き合っていく病気だからです。

 軽躁の波が来た時に、気分が上がり過ぎないように自分で仕事や生活での活動量を抑えて、日々の気分を安定させるようにします。

 例えば、「外出する予定を取りやめる」「身体を休めるようにする」など、自分で活動量を減らし、躁状態の時の気分を上がらないように抑えることが、次に来るかもしれないうつの波を抑えることにつながります。

 軽躁状態があっても、その後でうつが現れなければコントロールできているということになります。この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです。

 だからこそ、早期に、双極性Ⅱ型障害であると診断されて、本人が自覚し、リワークプログラムで病気との付き合い方を学んで、それを実践できるようにすることが大切です。

 リワークプログラムの中には双極性Ⅱ型障害の人向けの特別なプログラムはありませんが、同じ病気の仲間がいることで、この病気と付き合う方法を互いにシェアしたり、学び合うことができることが、患者さんにとってとても重要だと考えています。

 次回は、うつの症状の背景にある別の病気、「発達障害」についてお話しします。

(構成/ふくいひろえ)

注目の『リワークプログラム』の全容がわかる一冊

 うつは自宅療養と服薬によって症状が回復します。でも、症状が消えて、通勤できる程度の回復では職場復帰には不十分です。なぜなら、休職しなければならなかった自分が持つ課題を克服するスキルを身に付けなければ、再び休職してしまう可能性が高いからです。

 本書ではプログラムを経て復職した元うつ患者と、リワークプログラムを考え出した医師が、元患者の体験談も交えながら、プログラムの内容とその効果を、資料も提示しながら分かりやすい言葉で紹介しています。

『職場復帰を支え、再休職を防ぐ! うつのリワークプログラム』
五十嵐 良雄 著 / 日経BP / 1,512円(税込) / 224ページ

五十嵐 良雄(いがらし・よしお) 精神科医・産業医 メディカルケア大手町院長
一般社団法人 東京リワーク研究所 所長
五十嵐 良雄

1976年北海道大学医学部卒業。秩父中央病院院長などを経て2003年にメディカルケア虎ノ門開設。2005年、うつからの復職を支援する「リワークプログラム」を始め、2018年春までに1400人がこのプログラムを利用して職場復帰。2012年の調査では3年後の就労継続率はおよそ7割に及ぶ。2008年、うつなどで休職する人の職場復職支援を行う全国の医療機関向けの「うつ病リワーク研究会(現、日本うつ病リワーク協会)」を発足し代表世話人(現、理事長)に就任。日本産業精神保健学会理事他。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。