二次障害として双極性障害になることも

 また、発達障害があることで、その二次障害として、うつの症状が出るだけでなく、双極性II型障害になることもあります。このことは国内外の論文で報告されるようになってきています。

 つまり、「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある、ということです。

 大事なことは、人事担当者が「こういう場合もある」ということを知っておくことです。知っていれば「ああ、そういうケースなんだな」と分かる。あるいは「もしかしたら?」と気づくことができます。

人格的な異常ではなく、一定の割合で存在する

 発達障害については、周囲の理解にまだまだ温度差があり、「その人の性格のせいだ」「やる気がないからだ」と人格的な問題ととらえられがちですが、全くそうではありません。

 文部科学省の行った学童を対象とした調査からは、発達障害は全学童の5~6%ほどはいるとされ、本人はとても悩んでいます。できること・できないこと、得意なこと・不得意なことがあるのです。

 会社側の対応は大変だろうと思いますが、発達障害的な要素は、程度の差があるだけで、実は誰もが多かれ少なかれ持っているものだととらえます。そう考えなければ、人材として力になりません。

 発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です。

まずは本人側の困りごと、職場側の困りごとを整理

 ここからは対応についてお伝えしていきましょう。

 社員のうつ症状の背景に「発達障害がある」と分かった場合は、まず、本人側の困りごとと、職場側の困りごとを整理することです。それは共通していることもあれば、共通していないこともあります。

 そして、本人に「自分の得意なこと、不得意なこと」をハッキリ、自分で知ってもらうことが大事です。なぜなら、それは周囲には分からないことだからです。とはいえ、自分で自分の得意・不得意を認識することも簡単なことではありません。

 メディカルケア虎ノ門の「リワークプログラム」でのプログラムでは、発達障害の人向けのものもあります。

 そこではまず、発達障害についての書籍や論文を読んで、病気についての理解を深めてもらい、自分の特性や特徴がどのように表れるのかに気づいてもらいます。そして、仕事の場面での自分の強み、弱み、職場での困りごとについて理由を分析して、対処法を検討します。

 本人がどういうことが得意で、どういうことが不得意なのかが分かれば、今度は周囲が「得意なことをいかに仕事で生かしてもらうか、不得意なところをどうするか」という対応を検討することができます。

視覚情報には強いが、音声情報には弱い

 脳では、視覚的な情報と音声情報の処理は脳の別々の場所で行われます。一般的に発達障害の人では視覚情報は強く、聴覚情報が弱いことが知られています。

 例えば、会社での業務は主に視覚情報と聴覚情報を元に行っています。視覚情報の代表は書類です。聴覚情報の代表は電話や会議ですね。発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります。

 だから、会議などで話が進んで「はい、では●さんは××を担当してください、▲さんは◇◇をお願いします」と、仕事の分担が告げられたとしても、発達障害の人は自分が何をやったらいいのか理解するのが苦手です。メモを取っているようでも、耳で聞いた情報を整理するのは得意ではないので、本人は十分理解できていません。

 一方で、彼らは視覚情報の情報処理能力はとても高い。だから、文書で指示されれば、自分でそれを読み解いてアウトプットをしっかり出せます。このため、大人の発達障害の人には業務指示は視覚情報で出すというのが原則です。

 とはいえ、すべての指示を文書で出し、会議や電話への対応を一切させないというのも現実的ではありません。ここでお伝えしたいのは、考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」ということです。