ジョブコーチの支援を活用しましょう

 「本人の困りごとと、会社側の困りごと」が完全に一致している場合は、その困りごとに対して対策をとればいいのですが、一致しない場合もあります。職場が困っていることを本人が気付いていない、分かっていないというケースです。

 本人が分かっていないことを直すのは難しいため、まずは本人に職場の状況を分からせなければなりません。そういう時に助けになるのがジョブコーチ(=職場適応援助者)です。

 ジョブコーチは障害者が企業などに就労する際に、円滑に職場に適応できるよう、その人がどういう仕事に適しているか、どういう職場環境なら働きやすいかといった、障害特性を踏まえた直接的、専門的な助言などの支援を、一定期間、障害者と企業の双方に行う援助者で、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」または厚生労働大臣が実施する専門の養成研修を受けています。

 具体的には、障害者に対して、「あなたは、こういうことが苦手なんですね」と、まず本人に苦手な内容を認識させ、次に「それはこういう風にすれば、解決できますよ」と指導、助言します。これによって業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上させ、また健康管理や生活リズムを整える支援を行います。

障害特性を踏まえ、仕事の教え方なども助言

 企業に対しては「この人にはこういう特性があるため、今の職場では、難しいでしょう。こういう能力がありますから、その能力を生かせる職場に変えてはどうでしょう?」といった雇用管理についての助言や提案を行います。その結果、配置転換などにつながることもあり、会社への貢献にもつながります。

 また、ジョブコーチは本人と企業だけでなく、本人の家族や、職場の同僚・上司にも障害者との関わり方、指導方法について具体的なノウハウを助言してくれます。

 ジョブコーチには3つのタイプがあります。

【1】地域障害者職業センター所属のジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う配置型ジョブコーチ。

【2】障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに所属するジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ。

【3】障害者を雇用する企業の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者の支援を行う企業在籍型ジョブコーチ。

 ジョブコーチ支援については、本人からの許可が必要ですので、会社だけの要望では利用できません。その点の注意が必要ですが、詳しくは各地域の障害者職業センターに問い合わせてみてください。

(構成/ふくいひろえ)

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五十嵐 良雄(いがらし・よしお) 精神科医・産業医 メディカルケア大手町院長
一般社団法人 東京リワーク研究所 所長
五十嵐 良雄

1976年北海道大学医学部卒業。秩父中央病院院長などを経て2003年にメディカルケア虎ノ門開設。2005年、うつからの復職を支援する「リワークプログラム」を始め、2018年春までに1400人がこのプログラムを利用して職場復帰。2012年の調査では3年後の就労継続率はおよそ7割に及ぶ。2008年、うつなどで休職する人の職場復職支援を行う全国の医療機関向けの「うつ病リワーク研究会(現、日本うつ病リワーク協会)」を発足し代表世話人(現、理事長)に就任。日本産業精神保健学会理事他。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。