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 長期化する新型コロナ危機は、企業の人材戦略にも大きな影響を与えている。採用プロセス、社員研修などの育成面でも様々な変革を迫られているのが実状だ。説明会やセミナー、イベントの多くが開催延期や中止となった。人事担当者からは、「人を預かる者として、もしセミナーに登壇して罹患したら一大事。とても参加できない」「社員の健康と安全を第一に考えれば、HRがテーマのイベントは特に自粛すべきである」という意見も聞かれている。

 非常事態が続くなか、CHO/CHRO(Chief Human Officer、Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)をはじめとした人事担当者は何を考え、どのようなアクションを起こすべきなのか?

 「このよう事態だからこそ、プラス思考のメッセージを発信していくのが人事の仕事だと思います」と語るのは、外資系インターネット企業の人事部長A氏だ。同社ではクライシス対策チームを立ち上げ、人事部門とともに勤務形態などに関する細かいガイドラインを作ってきた。

 「当社には日頃から従業員が積極的に発言するカルチャーがあるので、新型コロナ対策に関しては、早くから質問や問い合わせが殺到していました」とA氏。質問の多くは、働き方や人事制度に関するもの。そこで対策チームと人事では全社ミーティングをオンラインで開催することを決め、数千人の社員の声を拾った。「テレワーク『推奨』とは具体的に週に何日の在宅勤務を指すのかという質問から、会社のトイレのペーパータオル設置を止めるべきではないか、という非常に細かい問い合わせまで来ましたが、これらに一つひとつ丁寧に答えていくことで、次第に社内が落ち着いてきたのです。これを機に、当社の福利厚生についての説明も改めて行うことができました」とA氏は語る。

 2度目の全社ミーティングを行った際は、新型コロナ対策への質問は激減。代わって「このような状況下、当社が社会に貢献できることは何か」というテーマで建設的なディスカッションになった。社員同士でのサポートも進み、オンラインのチームでの成功事例の紹介も行われた。

 「オンラインでの全社ミーティングを重ねることで、社員がポジティブに思考し、活動するようになりました。これは人事にとっての大きな成果だったと思います」とA氏は振り返る。「リアルな会議やイベントが中止になった代わりに、オンラインでの情報発信の機会が増えています。これはむしろ、場所と時間の制約なく、広く多くの人に情報を届けられるチャンスととらえるべきではないでしょうか」