企業の人事戦略は、新型コロナウイルスによってどのような変革を迫られているのか。採用プロセスの変化、テレワークによる働き方改革の加速――。日本型雇用も転換期に来ている。ウイルスの流行は、人事と経営のありかたを変える契機になったともいえる。今回から数回にわたり、「新型コロナが変えた人事」について見ていく。

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「経営陣の意思決定が速く、素早く対策が打てた」と語るのは、カゴメでCHOを務める有沢正人常務執行役員だ。同社は2013年の新型インフルエンザ流行に際し、基本行動計画書を含むBCP(事業継続計画)を改訂していた。「中国・武漢が封鎖された1月時点で、日本でも感染拡大の可能性を想定した。その際速やかに対処できるよう即座にBCP改訂に着手し、2月にはおおよその作業を終えた」(有沢氏)

 ライフネット生命保険は「2月上旬に人事総務部が事務局となり、経営陣と関係部門長からなる新型コロナウイルス対策会議を設置した」(同社取締役副社長 CHROの西田政之氏)。準備室では毎日社長以下メンバーが情報共有し、課題管理表を作成。在宅勤務や時差出勤などに関する細かな通達を実施した。「政府から緊急事態宣言が発出されることが予見された3月末には同会議を緊急対策本部準備室に改称し、宣言発出と同時にBCPに基づいた緊急対策本部を速やかに設置した」と西田氏は語る。

 こうした緊急事態の際に何よりも大事なのは、経営トップから社員へのメッセージである。テルモは1月29日に本社として「新型コロナウイルス対策本部」を設置したが、同社取締役上席執行役員/CHROの西川恭氏は、「社長の佐藤慎次郎が非常に強い問題意識のもと、早い段階で『新型コロナウイルス感染症に対する基本方針』を発信した」と振り返る。基本方針の1つ目は「社員の健康と安全を守ること」、2つ目は「医療メーカーとしての供給責任を果たすこと」、3つ目は「感染防止と治療に積極的に貢献すること」。イントラネット、メール、ビデオ配信など様々な方法で伝えた。

 「緊急事態宣言発出の際、社長の森亮介から社員に発信するメッセージを真っ先に検討した」と語るのは、ライフネット生命保険の西田氏だ。発信内容は「守るべき優先順位として、最初に自分(社員)と家族の命を守ること。次に生命保険会社が担うべき社会的役割を再認識すること」の2つを軸にした。「トップのメッセージをいち早く出したことで社員の『一丸感』が醸成できた」(西田氏)