日本型雇用が終焉する?

 こうした動きが、日本型雇用の転換につながるという考え方もある。「これまで大企業が採用してきた年功序列、終身雇用のスタイルが、これを機に崩れていくだろう」とKDDI白岩氏は指摘する。

 欧米では業務内容を「職務記述書(ジョブディスクリプション)」で定める「ジョブ型雇用」が一般的だが、日本では新卒一括採用と終身雇用をベースにした「メンバーシップ型雇用」が根強く残る。昨年から経団連も日本型雇用の見直しに言及してはいるものの、国内でのジョブ型への移行はなかなか進んでこなかった。

 しかしテレワーク浸透による業務の「見える化」の加速が、雇用環境にも影響を与えるのではないか。カゴメ有沢氏も「これまでは人に仕事がついていたが、これからは仕事に人がつくようになる」と指摘している。同社は2014年に職務等級制度を導入した。「『その人がどんな仕事をやっているか』ではなく『何の仕事を誰がやっているか』が大事。弊社はこれをすべてイントラネットで検索できる」(有沢氏)。コロナ禍を契機に企業内で職務の明確化が進めば、雇用もジョブ型へと移行していく可能性がある。

 「自律と責任」を人事戦略のキーワードとしてきたKDDIでも、「当社は2019年からジョブ型に舵を切ってきたが、ここにきて大きく進んだと感じる」(白岩氏)

 テレワークによる大きな変革の2つ目は、キャリア自律の推進だ。在宅を機に自身のキャリアを見つめる時間が増えた、と有沢氏は語る。「自分の仕事は必ずしも毎日出社しなくてもできるのではないかと気づいたり、この状況下で今後どんな仕事をやりたいのかと真剣に考えたりする機会ができたのではないか」(有沢氏)

 「自分の得意分野の知見やスキルをもって、自発的に会社や社会に貢献したいと考える若者にとっての好機となる」と指摘するのはKDDI白岩氏だ。同社では若手社員から副業への希望も出ており、様々な仕事に挑戦したい社員を対象にした「社内副業」導入への対応も進めている。

 ライフネット生命保険では、社員がイントラネットで「ウィズ・コロナ、アフター・コロナを考える」というグループを自主的に作り、意見交換している。「在宅勤務によって余計なものがそぎ落とされ、自分は何を仕事としていたのか改めて突き付けられることになった。ある意味で自分の存在価値を再認識するなど、内省するいい機会になったと思う」(西田氏)

 一方で、テレワークに伴う課題や問題点も明らかになってきた。長時間の在宅によるストレスやコミュニケーション不足にどう対処するか。やむを得ず出社する社員への配慮も必要になる。次回は、働き方改革によって顕在化した課題とその対処法を見ていく。

大塚 葉(おおつか・よう) 日経BP 総合研究所 HR事業部 上席研究員
大塚 葉 日経BP入社後、「日経PCビギナーズ」発行人兼編集長、日経ビジネスオンライン、日経WOMANプロデューサー、日経BPコンサルティングカスタム出版本部第二部長などを経て現職。著書に『人材マネジメント革命~会社を変える〝カリスマ人事″たち~』『攻める周年事業で会社を強くする!』(いずれも日経BP)、『社史・周年史が会社を変える!』(日経BPコンサルティング)、『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。