心臓カテーテル治療の独自技術による製品展開などで、世界で存在感を強める医療機器メーカー、テルモ。新型コロナの影響で、重症患者の治療装置なども注目される。同社の海外売上比率は年々増加傾向にあり、社員の約8割が海外で働く。7事業のうち4つは本部拠点が海外にある同社で、グローバル人事施策を推進する取締役上席執行役員CHROの西川恭氏に話を聞いた。

――2018年に本社CHROに就任なさいましたが、その前は欧州勤務でした。

西川 恭氏(以下、西川):2012~18年までテルモヨーロッパ社の社長をしていたので、欧州や中東からテルモを客観的に見られたと思います。この時の経験でお話しすると、当社はグローバル化が進んでいる面と、そうでない面があります。例えば欧州でシニアリーダーを募集すると非常にいい人財が来る一方で、「日本的な古い体質の会社」と指摘されることもありました。

 ある印象的な事件がありました。当社の現地女性幹部が競合会社に引き抜かれる出来事があったのですが、彼女が会社を去る前に「私はずっと、自分が女性であり日本人でないという2つのディスアドバンテージ(不利な点)を感じていた」と話したのを聞き、「(グローバル企業として)これはいけない」と思いました。

 一方で日本の経営トップと話すと「海外の人財を登用したいが、どこにどのような人財がいるか分からない」という声が聞こえてくる。当社はグローバル化が進んでいるようで、実は日本と海外の間で「すれ違い」があることが分かってきました。

西川 恭
テルモ 取締役上席執行役員 チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO) 、人事部・グローバル人事部・人財開発室・ダイバーシティ推進室担当
1959年生まれ。1982年東京大学法学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入社。みずほコーポレート銀行人事部次長、同社執行役員などを経て、2010年6月テルモに入社し、執行役員、国際統轄部統轄。2012年3月東欧・アフリカ・中東統轄(現東欧・ロシア・中東・アフリカ地域代表)、テルモヨーロッパ社取締役社長。2018年4月上席執行役員 チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO)、人事部、人財開発室担当。2019年6月に取締役就任(撮影:稲垣純也)

――2018年7月に日本に戻ってから、グローバル人事をどのように推進しましたか。

西川:まず約10カ所の海外拠点を回って現地の人事部リーダーと議論し、外部のコンサルティング会社の協力も得ながら、グローバルな人事戦略のフレームワークを短期間で策定しました。2018年12月、当社のグローバル人事の出発点としてタレントマネジメントに着手しました。

 そのうちの1つが、グローバルキーポジション(経営幹部)候補者約250人のリストを作成したことです。もう1つはグローバルリーダー研修の実施です。当社では世界の地域・事業の幹部約40人が集まる「グローバルリーダーシップミーティング」を年1回開催しますが、このグローバル幹部の候補となる人材を育成するわけです。研修の対象年齢は当初35~45歳と考えていましたが、実際には50代もいました。研修が終わって約10年はテルモに貢献してもらうイメージです。