日本の企業経営が激しい環境変化の波にさらされる昨今、経営の視点による人事戦略が必要になってきている。CHO/CHRO(最高人事責任者)という役割も注目されている。今回は、2011年からグローバルな人事戦略に舵を切った日立製作所の人材マネジメントをリポートする。同社の代表執行役 執行役専務 兼CHRO 兼人財統括本部長である中畑英信氏に話を聞いた。

――グローバル化を進めるため、人事制度を大きく変えてこられました。施策と成果をお教えください。

中畑英信(以下、中畑):当社は2011年に「グローバルな人財マネジメント戦略」に転換しました。きっかけは、2008年に大きな赤字を出したことです。日立は工場が強くモノづくり中心の会社で、高度経済成長期の成功体験がありました。しかし工場への巨額の投資が回収できず、赤字につながった。ビジネスモデルを大きく変えなければ、生き残れなくなったのです。

 2009年に社長が川村隆に交代して新体制になり、2010年に社長を引き継いだ中西宏明とともに2つの変革を進めました。1つ目は「グローバル事業の拡大」、マーケットを日本中心からグローバルに広げることです。2つ目は「社会イノベーション事業の推進」、製品を売ること(プロダクトアウト)から、お客様に必要な価値やサービスを提供する方向に舵を切ることです。それも、社会やお客様の課題にこたえ(マーケットイン)、課題を探して掘り起こす(マーケットクリエイト)ことを進めなければいけません。

日立製作所 代表執行役 執行役専務 兼CHRO 兼人財統括本部長 中畑英信氏
1983年日立製作所入社、2014年執行役常務CHRO(最高人事責任者)兼人財統括本部長、18年から現職。(撮影:菊池くらげ)

 その際に求められる人材とは、日本人男性だけでなく外国人や女性などいろいろな視点を持った人、働く国が違っても場所を超えて一緒に仕事を進められる人、お客様や社会の課題をプロアクティブに探しにいける人ということになります。こうした人材をマネジメントするため、2011年、中西が各国の人事トップを呼んで「グローバルで共通の人事制度を作ろう」と号令をかけました。それまでは、評価制度や従業員サーベイも国ごと、会社ごとにバラバラだったのです。

 まず2012年度に、25万人の人材情報をデータベース化した「グローバル人財データベース」の構築に着手しました。次に2013年~14年にかけてマネジャー以上のポジションの格付けをする「グローバル・グレード」と、これに基づく評価と給与制度「グローバル・パフォーマンス・マネジメント」を確立しました。さらに2017年度からワークデイによる「人財マネジメント統合プラットフォーム」を順次導入し、社員のスキル、経歴、評価などを共有しています。

 最初は「日本人用の人事制度で不自由ないのに、なぜグローバルにしなければいけないのか」と抵抗もありました。しかし導入によって、国籍や働く場所の違いがあっても同じように評価できるようになりました。例えば私の部下は16人が外国人で、2人以外は海外で働いています。国籍が違い別の場所にいても、同じ目標を持って一緒に業務を行っているので、評価制度がバラバラでは仕事になりません。

 現在、日立グループ社員30万人(日本人16万人、外国人14万人)のうち海外の直接員以外の25万人を目標に、プラットフォームでの情報共有を進めています。導入してからだいぶ定着し成果も出ているので、今後はピープルアナリティクスも行っていきたいと思っています。