「16時半退社」などの施策で話題を呼んだ味の素。2016年から経営主導での働き方改革を推進してきたが、「2020年にグローバル食品企業のトップ10入り」を目指し、人材マネジメントも加速する。同社でグローバル人事戦略を進める、理事 グローバル人事部長の髙倉千春氏に話を聞いた。

――ここ数年、働き方改革に積極的に取り組んできました。重点施策と成果を教えてください。

髙倉千春(以下、髙倉):当社の働き方改革の趣旨は、不要な業務を削減して付加価値のある仕事にシフトし、結果として生産性を上げていくことです。ただ業務の要不要を決めるのは難しいので、最初は労働時間を強制的に減らすことが必要でした。「働き方改革1.0」というか、フェーズ1ですね。成果として、17年から取り組んだペーパーレス化によってコピーや印刷業務が減り、不要な仕事が減りました。会議の資料も以前は細かく作りこんでいましたが、簡素化して効率が上がりました。

 現在はフェーズ2、「働き方改革2.0」とも言うべき時期に入っています。ご存じのように味の素グループはCSV経営戦略としてAjinomoto Group Shared Value(ASV)を定め、会社の成長とともに社会に価値を提供することに取り組んでいます。フェーズ1で不要な業務をかなり整理し働き方のベースもできたので、今後は新しい時代に向けて付加価値を提供し、社会的価値を追求するには何をすべきかを検討するフェーズに移ったということですね。

味の素 理事 グローバル人事部長 髙倉千春氏
1983年農林水産省入省。1993年からコンサルティング会社で、組織再編や新規事業実施にともなう組織と人材開発を担当。1999年からファイザー、2006年からノバルティスファーマなどの人事部長を歴任。2014年に味の素に入社し、2018年4月から現職。(撮影:菊池くらげ)

――この数年で進めた御社の「グローバル人財戦略」についてお聞きします。また御社にとって必要な「人財像」を教えてください。

髙倉:まず人事制度の根幹は、社会的/経済的価値を共創させるという大目的のために、会社と個人が共に継続的に成長するための仕組みだと思います。ただ、今は世の中の変化のスピードが速いので、どう成長すべきか戦略的に検討しなければいけません。

 当社の社外取締役で一橋大学大学院経営管理研究科特任教授の名和高司氏が『企業変革の教科書』でも指摘していますが、変化はこれからもずっと続き、世の中が変わると戦略が変わり、それに従って必要な人財も変わってきます。でも、変化が起きるたびに人事制度を検討し直していたのでは、スピードに追いつけません。世の中がどう変わっても、すばやく対応できる制度が必要になります。そこで社長の西井孝明のサポートで、ポジションマネジメントとタレントマネジメントを導入しました。

 ポジションマネジメントについては、会社の戦略を元に各ポジションの職務要件を明確にし、職務記述書にして管理職全員に公開しました。職務要件は例えて言えば、「管理職が座るポジションという椅子は、どのような大きさで、赤いのか、青いのか」といったことで、「赤い椅子に座るのは赤い人」ということになります。世の中の動きによって戦略が変わると、必要な管理職のポジションという椅子の大きさも色も変わってきます。この間まで会社に必要だったのは赤い椅子でも、これからは青い椅子になるかもしれません。その場合は「青い椅子に座る青い人」を探す。これがタレントマネジメントです。