全社員が業務改善策などを毎日約130字でトップに報告する「三行提報」でも知られるサトーホールディングス。スキャナー、プリンター、ラベルなどの開発、製造、販売を行う各社を傘下に有する同社が注力している人材戦略について、執行役員CHRO兼 北上事業所長の江上茂樹氏に話を聞いた。

――2016年度に「人財戦略ロードマップ」を策定しました。最近のお取り組みを教えてください。

江上茂樹(以下、江上): ロードマップ自体は2016年度に策定しましたが、2018年度に人財部門のミッションならびに役割を改めて定義しました。当社は40年以上前から三行提報、10年以上前から定年65歳制度といった独自の取り組みを行ってきました。しかし個々の施策に目が行きすぎると、そもそも何のためにやるのかという目的を見失いがちです。制度を作り研修を行うのが人事の最終目的ではなく、それらの施策が、ビジネスと会社の持続的成長にどうつながっているかを考えることが必要です。

 そこで定義した人財部門ミッションとは、「ビジネスの持続的成長のために、『現場力』と『サトー企業理念』を実践して顧客価値創造を担う人財を育てる」といったことです。このようなミッションを策定し、何かあればここに立ち返れるようにしました。

 社長の小瀧龍太郎は、「点でなく面の施策に。木ではなく森を見てほしい」と強調しています。そこで社長と人事チームで試行錯誤し、「人財戦略ロードマップの関係性」という図を作りました。まず会社の事業の方向性があり、それに基づいた人員計画があります。そこから採用、人財開発などの具体的施策を行いますが、そのすべてが会社の持続的成長につながるというイメージです。会社の目標がチームから個人まで降りていき、個人の成果がチーム、ひいては会社の成果になるというサイクルを回していくわけです。これらを支える土台に企業理念、ダイバーシティ&インクルージョン、タレントマネジメント、人事業務効率化、健康経営などがあります。

サトーホールディングス 執行役員CHRO兼 北上事業所長 江上茂樹氏
1995年三菱自動車工業株式会社に入社。2003年から三菱ふそうトラック・バスに移籍し、人事部門に従事。人事・総務本部組織戦略部長、開発本部開発管理部長、人事担当常務人事・総務本部長(兼ダイムラートラックス・アジア人事責任者)を歴任。2015年にサトーホールディングスに入社しCHROに就任。2016年7月同社執行役員、2017年4月より現職。(撮影:菊池くらげ)

――人材に関する施策で、特に力を入れていることは何ですか。

江上:現在、シニアなどベテラン社員の活性化に力を入れています。当社は2007年に定年を65歳に引き上げましたが、役職定年は56歳のままでした。なかには、ポストを外れてモチベーションが下がってしまうシニア社員もいたため、2017年からは役職定年を60歳に改めました。ベテラン社員の賃金カーブの見直しなど報酬制度も変え、一線で活躍し続けてほしい社員には管理職を続投してもらうケースも出てきています。

 また、56歳を迎えた社員に向けて開催していたセミナーは、以前は「老後のマネープラン」など“引退”をイメージさせるものでしたが、2年前から「業務の棚卸と自己分析」「今後やりたい仕事に関する面談」など“生涯現役”を訴求する内容に変えました。もちろん社員によって仕事への意欲や能力は違いますが、「一律に年齢で切ることをしない」というメッセージを伝えています。