――人材マネジメントに関して、今後の課題はありますか。

島田:管理職、つまり部下を育成する責任のあるマネジャー層の力量を上げることを意識しています。マネジャーはチーム全体の成果を上げるとともに、一人ひとりの成長を促す立場にあります。そこでマネジャーのリーダーシップ、気づき、自ら切り拓いていく力を上げていきたいと思います。これによって、部下のモチベーションやエンゲージメントも自然に高まると考えています。

 さらに、その上のダイレクターの“あり方”も重要です。まず社長の日々の言動が大事で、次に役員グループのリーダーとしての力量が上がり、役員、ダイレクター、マネジャーとカスケードしていって最終的にチームメンバーの成長につながっていく――。その意味で、育成はトップダウンであるべきですね。

 人事に関しては、大事なことが二つあります。まず人間に対する見方や捉え方について。一部には、社員を人として見ずに役職で判断したり、機械的に扱ったりする人事担当者もいるのではないでしょうか。それが人事と社員のバリアになってしまっていると思います。

 もう一つは、相手に遠慮したり自由に発言できなかったりする風潮が一般的にあるように思います。なぜ仕事をするのか、という意識が薄いからではないかと思います。言われたことは責任感を持って進めるけれど、何のためかと聞かれても答えられないことも多い。purpose(目的)を持っていないのでしょうね。

 人間にとっての大いなる目的、突き詰めると「自分は何のために生きているのか」という話になりますが、その気づきを最も提供できる場が組織だと私は思います。会社とは、何のために存在しているのか。人は、その存在理由のどこかに共鳴するから入社するわけですよね。でも、単に会社にいることや、目の前の仕事をこなすことだけが目的になると、長時間労働や残業という問題に焦点が行ってしまうように感じます。もちろん、何かに夢中になり没頭して長時間働くなら問題ないですが、誰かにやらされ、タスクに追われながら残業して疲れて帰宅して、朝は通勤ラッシュにもまれて出社というのは本当にもったいないし、毎日つまらないと思います。

人事の資質は人を好きになること

――人事担当者に必要な資質については、どのようにお考えですか。

島田:やはり、個別対応は重要です。でも全員に同じだけの時間を使うことはありません。会社である以上、投資対効果がより高くなるようにトレーニングし、機会も提供します。どんな投資をするとその人が成長し、ひいては会社の成長につながるのかを見極めることが必要です。

 前の社長から「皆に時間を使うのではなく、キータレントにフォーカスして、会社に必要な人に絞って面談をした方がいい」とアドバイスされたことがありました。確かに自分や相手の時間は限られているので、一理あります。でも私はやはり、求められたり頼まれたりというニーズのあるところに出かけていって、自分のできることをしたいとも考えています。私自身も、そうやって誰かからインプットをもらって成長してきたのだと思いますから。

 面談も、何十分も何時間もかけなくてもいいんです。一言声をかけたり、肩をポンとたたいて笑顔を見せたりするだけで人はエネルギーをもらえるし、変わることができます。そのような機会をできるだけ作ることが大事で、自分がほかの人にとってそのような存在であるということに、とても気を遣っています。そのためには、まず自分が健康で、ハッピーであること。そうでないと人を幸せにできません。自分がハッピーになるためには時間を取りますし、しっかり休みます。

 人事担当者に絶対に必要な資質とは、「人が好きであること」だと思います。次に、相手が誰であっても意見をきちんと言うこと。そして自分が何のためにこの仕事をしているかという目的に対して、意識的であること。これらがあれば、誰でもCHROになれると思いますよ。

大塚 葉(おおつか・よう) 日経BP 日経BP総研 HR人材開発センター長
大塚 葉 日経BP入社後、「日経PCビギナーズ」発行人兼編集長、日経ビジネスオンライン、日経WOMANプロデューサー、日経BPコンサルティングカスタム出版本部第二部長などを経て現職。著書に『攻める周年事業で会社を強くする!』(日経BP)、『社史・周年史が会社を変える!』(日経BPコンサルティング)、『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。