保険料の内訳を業界で初めて開示し、シンプルな生保商品を世に問うたライフネット生命保険。開業から10年以上が経ち、このたび人材戦略に関して「挑戦と成長」というポリシーを明文化した。成長のためのマインドセットと人材育成を重視する、同社の人事総務部長の岩田佑介氏に話を聞いた。

――ここ数年の重点的な組織改革と人材戦略について聞かせてください。

岩田佑介氏(以下、岩田):最も大きい改革は2018年4月の人事ポリシー改訂で、「挑戦と成長」というキーワードを明文化しました。挑戦と成長の起点になるのが、「グロース・マインドセット(経験や努力を通じて、人は成長できるという考え方)」です。

 これは例えば、周囲からの批判を学びの機会として受け入れたり、目の前の困難に積極的に向かったりする姿勢で、しなやかに挑戦することを重視する考え方です。最近では組織・人材開発における主流な考え方となっており、この「グロース・マインドセット」か、または「フィクスド・マインドセット(成果は元々の才能によって決まるので、経験や努力には意味がないという考え方)」を持つかによって、ビジネスの成果が変わってくると言われています。

 当社のほとんどの社員は既に「グロース・マインドセット」を持っていますが、組織の文化として改めて明文化し、人事ポリシーとして掲げたのが大きなポイントです。

ライフネット生命保険 人事総務部長 岩田佑介氏
1987年生まれ。神戸大学経済学部を卒業後、2010年パソナに入社。シンクタンク部門の行政向け企画営業と民間企業向けの人事コンサルタントを兼任する。2016年ライフネット生命保険に入社し、2018年7月より現職。2019年、立命館大学客員教授(超創人財育成プログラム)に就任。(撮影:菊池くらげ)

岩田:人事ポリシー改訂後に、評価、賃金に関するグレードの制度をすべて変えました。グロース・マインドセットの方針をもとに、評価軸を成長度で測ることを重視しており、これが職能型の人事制度を有している多くの日本企業との違いです。通常は能力の高低を測る能力評価制度ですが、当社は成長の差分に着目した評価制度なので、能力が高い人でも去年と同じ状態ならば良い評価にはなりません。逆に今は能力が中程度でも、1年でかなり成長できれば高い評価になります。

 ポリシーを明文化し経営陣の合意ができたことで、人事としてそこにひもづく様々な打ち手が打てるようになりました。この制度を入れて1年経った成果の一つは、外部からの評価です。「第4回ホワイト企業アワード」(ホワイト財団)の「働きがい部門」、この人事制度のベースとなったポリシーの部分については平成29年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)経済産業大臣表彰を受賞しました。

 社内の声としては、評価制度自体に「現状維持ではいけない。常に挑戦と成長をすべきだ」という概念が内包されているため、マネジャーから部下に対して「今年は何を伸ばしていくか」というストレッチ目標を自然と問いかけることができ、部下の成長支援がしやすくなったという意見も上がっています。ただ、この「成長の測り方」が難しく、運用面での課題はまだ残っています。どのようにして成長を定義し、評価していくのか、そこにどのように納得感をもたらすのかというテーマは、我々人事としての「挑戦と成長」です。