「エンプロイーサクセス(社員の成功)」を人材マネジメントの要としているセールスフォース・ドットコム。同社の様々な製品やシステムをオンボーディングや育成に活用することで、社員のエンゲージメント向上をはかっているのが特徴だ。同社で人材戦略を進める常務執行役員人事本部長の鈴木雅則氏に話を聞いた。

――人材戦略として、社員のエンゲージメント向上に注力しています。

鈴木雅則(以下、鈴木):日本では、モチベーションを高く持って働く人が少なく、さらに人手不足で欲しい人材が獲得しにくいという現状があります。こうした背景のなか、当社では社員のエンゲー ジメントを高め、会社に貢献してもらえる環境を整備していくことに最も力を入れています。

 当社には「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という4つのコアバリューがあり、これらに共鳴してくれる人を採用し育成することが大事だと考えています。4つのなかでは特に「カスタマーサクセス(お客様の成功)」を重視し、同様に人事面では「エンプロイーサクセス(社員の成功)」を大切にしています。私たちの部署はまさに、「エンプロイーサクセス」という名称です。社員の成功があって初めてお客様の成功があるというのが当社の考え方で、その意味でも社員にしっかり投資するという発想があります。このため職場環境の整備や研修にも力を入れ、社員がエンゲージメントを高く持って働けるための様々な施策を打っています。

――「働きがいのある会社ランキング2019」(Great Place To Work(R) JAPAN) で、「大規模部門」の1位になりました。

鈴木:社員に投資すればお客様へのサービスレベルが上がる、という考え方に立脚した取り組みの効果が上がってきたためだと感じています。また当社はIT企業なので、自社の先進テクノロジーを有効活用して社員に良い体験をしてもらう点にフォーカスしています。社員のエンゲージメントを向上する施策の一つに、新入社員向けのオンボーディングがあります。

 これまでは、他社と同じように、新人研修の初日に必要以上に多くの情報を与えてしまっていました。社内手続きやコンプライアンス、IT周りの知識など、必ずしもその時すぐに必要ではない情報を一度に聞かされると、新人は混乱してしまいます。これでは、EX(Employee Experience=従業員体験)は良くなりません。そこで当社製品のSalesforce Marketing Cloudを使って、2016年に自動メール配信「ジャーニーメール」を始めました。新入社員が入社後1年の間、経費申請の方法やその年の目標設定など、必要な情報に関するメールが適切なタイミングで届くようになっています。マーケティング部門が顧客向けに行う試作を、社内に応用したわけです。

 これまでは新入社員から人事オペレーションチームに多くの質問が寄せられていましたが、メール配信により問い合わせが 30%減りました。配信メールの開封率から、どのくらい役立ったかも把握できるので、メール内容も随時更新しています。

セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 人事本部長 鈴木雅則氏
2003年米・コーネル大学大学院にて人材マネジメント・組織行動学修士を取得。同年GE に入社し採用を担当、2006年グーグルに入社し日本における新卒採用の立ち上げとアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムの企画・実施を担当する。2011年、人事コンサルタントとして独立し、主に日本企業に対してリーダーシップ研修や人事コンサルティングを実施。その後QVCジャパン、ビー・エム・ダブリューを経て2019年2月より現職。(撮影:菊池くらげ)