復職支援プログラム参加者の7割近くが発達障害

 うつの症状で休職する社員の中に、大人になって初めて発達障害と分かる「大人の発達障害」が背景疾患にあるケースが近年、急増しています。

 これは、すでに昨年記事でお伝えしましたが、現在、私のクリニックの復職支援プログラムに通う患者の約7割に、典型的ではないのですが発達障害の傾向のあることが分かっています。これには私自身も驚きました。

 彼らは復職支援プログラム参加中に、自分が発達障害であることを受容し、障害の特性について学び、グループワークの中で自らの「得意なこと」「不得意なこと」を確認して、復職後に向けて準備を進めていきます。

復職した職場で「うつ」が再び現れるのはなぜか

 しかし、この「大人の発達障害」で、私が頭を悩ませているのは、彼らが復職後の仕事の中でトラブルに遭いやすく、再び、うつの症状が現れて、再休職してしまうことです。何度も休職を繰り返していると、やがては退職しなければならなくなる可能性もあります。本人も、職場も、医療機関も大変困っています。

 改めて「大人の発達障害」とはどういうものでしょうか。

 「発達障害」は、脳の発達がアンバランスなために「周囲とうまくコミュニケーションをとるのが苦手」「不注意によるミスや忘れ物が多い」といった、苦手なことや困りごとがあります。多くは子供時代に現れて、本人に近い家族が気づくことが多いものです。

 ところが、障害の程度が軽い場合は、周囲も気づかないまま成長します。そして、社会人として働くようになって初めて、「苦手なこと」「困りごと」に仕事として取り組まなくてはならなくなります。そこで、うまくいかずに憂うつを感じるようになり、うつの症状が現れて休職に至ります。

 つまり、うつ症状の原因は職場環境ではなく、本人の発達障害によるものです。そして、うつの症状は服薬治療などで改善できますが、発達障害は消えません。そのため、再休職しやすいのです。

 「大人の発達障害」は成人するまで顕在化しないくらい障害の程度の軽い人が多く、医療機関では「発達障害である」という診断基準に満たないグレーゾーンとして「発達障害の傾向がある」と判断されます。

 発達障害は大きく分けると2つあります。

●自閉症スペクトラム障害(ASD)

 人とのコミュニケーションがうまくとれない、場の空気が読めない、特定のことに強くこだわる、あいまいな表現や指示を理解しにくい、優先順位をつけたり、予定を立てるのが苦手といった特性があります。

●注意欠陥・多動性障害(ADHD)

 不注意によるミスや忘れ物が多い、カッとしやすい、落ち着きがない、思い立ったことをすぐにやりたくなるといった特性があります。