前回は働き方改革の推進が加速する、今の時代ならではの「生産性を向上させるための方法」の一つとして、採用候補者が求めるポジションに適したソフトスキルを有しているかどうか、それを見抜くために適切な準備をし、十分な面談を重ねることについてお話ししました。

 厚生労働省が実施している「雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」の最新データである「平成27年転職者実態調査の概況」によると、転職者が現在の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)の上位3つは以下の通りとなっています。

1位:仕事の内容・職種に満足がいくから 40.8%
2位:自分の技能・能力が活かせるから  37.5%
3位:労働条件(賃金以外)がよいから  24.9%
※出典
厚生労働省「雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」
3.転職について(5)

 この結果は、企業側にとってだけでなく、採用候補者側から見ても、自分が就くポジションと自身の持つソフトスキルが合致していることが重要である、ということの表れでもあると思います。

 しかし、慎重にソフトスキルを見抜いて採用したはずの人材が、残念なことに会社を離れてしまうというケースもあります。

 その原因の一つとして考えられるのは、「我々は社会に何をもって貢献するのか」という会社の実際のミッションと、候補者の思い描くその会社のミッションとのズレや、「どんな仕事をしてほしいのか」という会社が期待する役割と責任の範囲と、候補者自身が任されると思っている仕事内容、責任の範囲のズレです。

 「採用してみたら何か違った」「実際に入ってみたら何か違った」という思いを互いに感じずに済むよう、採用段階では候補者のソフトスキルを見抜くだけではなく、この2点に関する双方の見解を一致させておくことが重要です。

 そのズレの発生を防いでソフトスキルのある人材を採用することができたら、組織の生産性を高めるために次にすべきは、「個々の成長目標を設定する」ことです。これは新入社員も含む全社員に対して有効ですが、特に即戦力として採用したのだからと、放任されがちな中途入社者や、すでに長く在籍しており自身の成長に意識が向いていない社員の、生産性の向上に役立つ方法です。

 「目標の設定」なんて、そんな基本的なこと……と思われるかもしれませんが、実際に機能する目標を立てて、それを実践することの難しさ、そしてその実践によって成長を遂げ続けることの難しさは、皆さんも多かれ少なかれ感じたことがあるのではないでしょうか。

 私は組織や人が確実に成長していくための目標設定には、いくつかの<設定ルール>と<事前に会社側が準備しておくこと>があると思っています。

<目標設定のルール>
①目標は一つに絞ること
 あれもこれもと手を出して、結局どれも中途半端になってしまうような事態を避けるためにも、目標は一つだけに絞ります。その目標を達成するための行動はいくつあってもかまいません。いくつも目標を立てて取り組むよりも、一つクリアするごとに、これまでよりも少し上の目標を立てて、着実に進んでいく方が、効率よく目指すゴールにたどり着けます。とにかく、体得するまで徹底してやり続けることです。本人も上長も結果や成長を焦ることなく、時間をかけて向き合う覚悟が必要です。

②目標とそれを達成するための行動は、本人が設定すること
 会社が示したゴールとステップをもとに「今、あなたを一番成長させる目標は何か?」という観点から、本人が目標を設定します。重要なのは「本人が」です。会社側から目標を与えるのは簡単ですが、それを自分が成長できる目標として本人が納得できていなければ、前向きに取り組むことができないからです。目標が設定できたら、それを達成するために日々実践する具体的な行動を設定します。具体的な行動はいくつあってもかまいません。