そして、組織全体として意識するのは、ナレッジの活用です。ナレッジとは様々な知識であり、スキルのことです。例えば、成果を挙げる人が持っているメールの文章や提案書のテンプレート、トーク例などを共有することです。部下に「自分で考える力」を付けさせることも上長の重要な役割ですが、既存のものを活用できる仕組みを作ること、「ここにあるよ」と教えてあげることによって、部下を支援することも重要な役割だと思います。

 とはいえ、上長が全ての部下を支援することはできませんし、一歩間違えると「上長に言われたからやる」「上長に怒られないようにやる」といった、刺激反応型の人材を育ててしまう危険性もあります。それでは、質のよい人材育成にはなりません。それを回避するためにお薦めするのは、2~3年先輩の人がメインとなって新入社員の支援にあたることです。

 先輩の姿を見たり、アドバイスを聞いたりすることによって、多くの気づきを得られるからです。上長は任せきりにするのではなく、支援を続けます。時には「もっと効率的な方法はないかな?」と気づきを促し、「そのテンプレートなら○○さんが持っているよ」とアドバイスします。そして、事実をニュートラルにフィードバックします。声のトーンが相手に影響を与えることがありますので、断定的な言い方は避け、ソフトに伝えると効果的です。

悪いフィードバックの例:
 「あんな小さな声じゃダメだ」
 「事前の準備が全くなってないな」

よいフィードバックの例:
 「今日のプレゼンは、声が小さかったね」
 「事前に○○の準備が少し足りなかったな」

 前者と後者の違いは、前者には評価(あるいは批判)が含まれており、後者は事実のみを伝えているということです。部下が考える余地をしっかり残しながらアドバイスをすることも、生産性向上のために、上長ができる一つの支援だと思います。

 確実に迫り来る「働き方改革関連法」の施行に向けての第一歩として、組織に属する個人、そして組織全体の意識を、今日から変えてみるのも一つの方法ではないでしょうか。

 次回は、「生産性の上がる日々の行動を実践する」についてお話ししたいと思います。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。