第1回でも述べましたが、これから我々が直面するのは、これまでより少ない人数、少ない時間で、今まで以上の成果を求められる時代です。すでにその兆しを感じている方もいると思いますが、その本格的な訪れは2019年4月の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の施行だと思います。施行に疑問があっても、気乗りしなくても、その時は否応なしに現実問題としてやってきます。事前に対策がとれる時間はあと半年ほどです。

 5回にわたって採用方法、個々の目標設定、意識変革、日々の行動実践、コミュニケーションという角度から、生産性向上のための方法をご紹介してきましたが、「生産性向上のため」と言いながらも、それは最終目的ではありません。生産性を高めた先にある「職場や組織がさらなる成果を出し、成長すること」こそが最終目的なのです。その実現のために、すべきことは3つあります。

①仕組みづくり
 まず、経営者は、自社のお客様を明確に定義し、どういう価値を提供するのか(できるのか)、お客様とどういう関係性がいいのかなど、会社のミッションやビジョンを実現するための方向性を示す必要があります。それに基づいて、今度は各組織のリーダーが先頭に立って、マーケティングの仕組みや、ビジネスモデルなど、組織を成功させる仕組みをつくります。この仕組みが会社のベースとなるのです。

②継続したイノベーション
 組織の成長には、イノベーションが欠かせません。先に述べた仕組みも職場環境や組織形態なども、市場や世の中の状況・ニーズに合わせて変えていかなければ、取り残されてしまいます。今や昨日は変えなくてよかったものが、今日には変えるべきものにリストアップされることも、昨日ようやく変えたものが、今日になったら古いものにカテゴライズされてしまうことだってあり得るのです。重要なのは、そういうことがあり得ることを認識し、世の中の流れや変化を感じながら、臨機応変に動き、常に可能な限り最も良い状態を目指して、イノベーションを繰り返していくことなのです。

③スピードアップ
 前述の仕組みづくりもイノベーションもそうですが、環境変化や生産性向上の波に耐えるためには、スピードが伴っていなくてはなりません。のんびりしていたら、次の波が来てしまうかもしれないからです。組織のスピードを遅くする要因のひとつは、「変わりたくない」と、自分の領域から出ようとしない人たちです。もちろん、多くの人は強さの度合いに差こそあれ、どこかに「変わりたくない」という気持ちを持っていますから、それを前提としながらも、組織を成長させる方向に一気に舵を切らなくてはなりません。

 方向性を決めたら、スピードを高めるために、「変わりたくない」と蛸壺化している人や部門を壺の中から引っ張り出すことです。そのためにも、上司はミッションやビジョン、目標などを早く達成するために、何をしたらいいのかを常に考え、宣言して自ら動くことが必要です。宣言することで、皆が理解し、上司自身が動くことで協力しようという気になるからです。ひとりで引っ張っていくよりも、周囲の協力を得た方が、当然、組織の成長に早くつながります。どうすれば、周囲の協力を得て動けるか、という点を考えて行動するとよいと思います。

 最後になりますが、「生産性」というと、部下が頑張って高めるもので、上司はそれを管理するものというイメージがなんとなくあるかもしれませんが、上司は部下の生産性向上をサポートするのはもちろんのこと、自分自身の生産性を高める必要があります。まずは、自分自身が職場の生産性を阻害するような動きをしていないか、確認してみましょう。上司が組織の生産性を下げている状態の代表例は「外出が多く決裁をしてほしい時につかまらない」「細かなことまで報告を求め、口をはさんでくる」と部下が思っているようなケースです。自分の本来の役割・仕事を見つめなおし、自分でなくてもよい仕事は潔く手放すだけでも、組織の生産性やモチベーションが高まる可能性があります(もちろん、丸投げするのではなく、十分な引き継ぎやフォローが前提です)。