(写真:123RF)

 5月20日、米司法当局は、日産自動車の元会長であるカルロス・ゴーン被告の国外逃亡を手助けした男性2人を逮捕した、と発表した。新型コロナの感染拡大で、報道が減っていたゴーン事件を改めて世間に思い出させることとなった。

 ゴーン被告が問われているのは、自身が受け取った報酬50億円について過少申告したかどうかにある。その報酬受け取りのスキームとなったのが、「ストック・アプリシエーション権」(SAR)と呼ばれる株価に連動する支払いの仕組みだ。それぞれの役員に設定した株価目標を上回ると、付与株式相当分を掛け合わせて、その分が現金で支払われる。仮に目標株価が1万円に対して株価が2万円になり、付与数が100株分であれば、差額の1万円に100をかけた100万円が報酬として受け取れるということになる。

 この運用を巡り、不正があったかどうかは司法に委ねるしかないが、ゴーン被告を含む日産の経営陣が退任し、かつ巨額の赤字に転落したことを見ると、条件設定と運用に問題があったことは明らかだ。

 SARといっても一般の社員には縁遠い仕組みと感じるが、実は、これは新型コロナ後の働き方と評価について、多くを示唆している。

 というのも、この制度は、正しく運用すれば「株価や業績」と個人の働きを連動する点で、管理職をはじめとする社員の仕事の成果を業績に反映できるからだ。米国企業では幹部や社員への報酬として、ストックオプション(自社株購入権)を広く採用している。こちらは目標株価と付与株式数を個人別に決めて、目標株価を上回ると、それに応じて自社株を与える権利で、個人別の業績連動による支払いという点では同じ思想を持つ。

日立が目指す個人の仕事と評価の再設計

 新型コロナの感染拡大を受けて、企業は従業員の働き方や評価の仕方を見直そうとしている。

 代表例は日立製作所。新型コロナを機に、リモートワークを拡大して、出社は週に2~3日という働き方を認める。それと並行して、人事評価・報酬のポイントを勤務時間や残業時間ではなく、より個々人の成果で測る仕組みに変える。仕事の仕方と報酬の仕組みを根本から作り直す。

 背景にあるのは、新型コロナを受けて、「会社にとって人材は資産である」や「雇用を守るのが企業の役割」という考えが強まっていることだ。医療従事者や物流関係者の奮闘を持ち出すまでもなく、経済活動や社会生活は多くの人が支えていることを感じる場面が増えている。だからこそ社員の安全を優先するリモートワークを定着させる。