企業人事に変革を余儀なくする新型コロナ。新入社員の採用面接や研修のオンライン化はその典型だ。「社員に会うのが仕事」だった人事部門だが、今後は「会わない」ことを前提に業務の再設計が迫られる。その武器がHRテックだ。

 2019年11月末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症は瞬く間に世界を覆い、2020年春には日本でも多くの企業がテレワークを余儀なくされた。このシーズンは人事部門にとってはかき入れ時。2020年新卒社員の入社と、2021年新卒の採用というビッグイベントが重なっているからだ。

 多くの企業では感染防止のため、新卒社員の採用と研修をオンラインに変更しウェブ会議システムなどのインフラで実施した。多少の混乱はありつつも、定着しつつあるようだ。日経BP総研が2020年5月に実施した『5年後の未来に関する調査<全産業編>』では、経営層の91.4%、総務・人事の90.3%がオンライン教育について「活用/普及/拡大が、今から5年の間に早まると思う」と回答。オンライン採用についてはそれぞれ、73.5%、81.4%に上った(回答者数は経営層:1390、総務・人事:113)。

 実際にオンラインでの採用、研修を経験した企業も手ごたえを感じている。ユニリーバ・ジャパンHD(東京・目黒)ではこれまでも新卒社員の採用プロセスの一部でオンライン面接を行っていたが、2020年はすべてをオンライン化。島田由香取締役人事総務本部長(CHRO)は「2カ月半オンライン漬けだったが、非常に効果があると感じている」と話す。KDDIでは新卒社員の入社式、研修、配属までオンラインで実施。「名刺の渡し方や電話のかけ方など、座学ではないプログラムをオンラインでできるか心配していたが、杞憂だった。ちゃんとスーツを着込んで、緊張しながら名刺交換のロールプレーイングをこなしていた」と白岩徹執行役員コーポレート統括本部人事本部長は話す。

「ハイタッチ」にこだわり、効率化進まず

 筆者は2020年3月まで人事部門に所属しており、採用活動のオンライン移行を実体験した。コロナの脅威が深刻になった2月から、キャリア採用の1次面接にマイクロソフトのオンライン会議システム「Teams」などを活用。「音声や画像のズレが生じて話しにくいのでは」「ネットワークが落ちたらどうする」等々不安もあったが、いざやってみると、多少のトラブルはあったもののあっけないほどうまく進んだ。

 一方でオンライン化によるメリットは大きかった。リアル面接では、応募者と面接官の予定を調整できても、会議室の確保に時間がかかり、他社から先に内定が出てしまうこともあった。オンライン化で会議室の制約はなくなり、面接までのリードタイムはぐっと縮まった。地方からの応募者との面接も飛躍的に容易になった。以前なら東京で面接を受けるために丸1日空けてもらわなくてはいけなかったのが、面接開始時間にパソコンの前に座りさえすればよい。交通費もかからない。

 コロナ終息のメドが立たず、多くの企業がテレワークの継続を予定するなか、人事部門の仕事も大きく変わる。社員の感情に配慮したハイタッチなコミュニケーションが求められる人事部門では、直接対面することをよしとする文化があった。採用にしても、応募者と対面して観察して採用の可否を判断する過程には、明文化しにくい暗黙知が多く、効率化はあまり意識されなかった。