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 新型コロナウイルス感染拡大を契機に、2020年から2021年にかけてジョブ型雇用に移行する企業が急増。資生堂、日立製作所、富士通などの発表が連日メディアをにぎわす。

 このようななか、人事担当者には新たな課題が突きつけられている。「経営トップから急にHRBP(HR Business Partner)を導入しろと言われ、困っている」という悩みを漏らす人事担当者が増えている。

 HRBPとは、人事研究の権威であるミシガン大学教授のデイブ・ウルリッチ氏が1997年に提唱した4つの人事機能のうちの一つだ。HRBPの役割は、事業戦略の支援と加速化である。事業部門の責任者と密に連携しながら、事業に必要な人材を社内外から調達して配置したり、事業部門の人材に関する課題解決に当たったりする。

 GE、マイクロソフトをはじめとした欧米企業は事業戦略と人事戦略の連動を最重視し、2000~2010年頃からHRBPを導入している。一方、導入で後れを取っていた日本企業でもグローバル化、人材流動化など労働市場の変化を受けてここ数年でHRBPが注目を浴びるようになってきた。さらにジョブ型雇用への移行が追い風となり、冒頭の人事担当者のように、トップからの突然の導入要請に戸惑う声も出てきている状況だ。

なぜ日本ではHRBPが育たなかったのか

 ではなぜ、ジョブ型雇用への移行がHRBPの導入を促すのだろうか。外資系インターネット企業の人事部長A氏は「もともと日本の人事でHRBPが浸透しなかった理由は、日本と欧米の人事機能の違いにある」と指摘する。

 欧米では企業の事業戦略を起点にし、それに必要なポジションと業務内容を「職務記述書(ジョブディスクリプション)」で定めるジョブ型雇用が一般的だ。「ジョブ型の組織では、部門ごとの事業戦略を進めるためにHRBPが人事戦略もサポートする。つまりHRBPが機能しやすい体制にある」とA氏は語る。一方で、新卒一括採用と終身雇用をベースにした「メンバーシップ型雇用」が根づいてきた日本の場合、「人事部が採用を一括で行い、配属を決めているので、HRBPがなじみにくかった」(A氏)

 さらにA氏は「ジョブが明確になり、ジョブに人がつくような組織では、本人が自らキャリアを決めることが必要になる」と指摘する。従業員が当事者意識を持って学び、自らキャリアを形成する「キャリア自律」が求められるわけだが、これまで組織にこうした土壌がなかったことも、日本企業でHRBPが浸透しにくかった理由と言うことができる。

 こうしたなか、冒頭に述べたようにコロナ禍を機にジョブ型雇用への移行やキャリア自律の重視が進むことで、日本企業でのHRBPのニーズがますます高まると考えられる。