ダイバーシティの主な観点
①雇用機会均等法とポジティブアクション
70年代まで、国内では海外との対比で女性の社会における活躍が不十分であるという問題がありました。1986年に「男女雇用機会均等法」が制定され、性別を理由とする差別の禁止不利益扱いの禁止を打ち出します。特に「セクシャルハラスメント防止」、男女差を無くすために積極的な措置を講じる「ポジティブアクション」(マイノリティに特別枠を設ける等)が取られたのです。国としては、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも全体の30%となる」ことを努力目標としています。
②性差を乗り越える目的
メンバーを捉える場合に、男女差が強調されてもそのメンバーを正確に捉えることができるかどうかはわかりません。しかし、生物学的な機能の差異があることも事実として理解し、メンバーの健康面、母性保護を踏まえた職務割当、指導のあり方が必要です。
③ 社会的な風土、習慣の問い直し
特にセクシャルハラスメントなどの争点となるものが、職場の風土的な男女の役割分担などの因習です。こうした問題は職場の中の個別面談、話し合いの中で引き出し、整理をしていくことが必要です。
多様性を捉える視点の広がり
アメリカ合衆国においては、人権尊重の側面で、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)といった人々を役員に登用し経営を行う運動があります。国籍、生活スタイル、宗教、価値観なども多様な価値観を経営組織の中で融合させることを指しています。日本でも最近、メディアで取り上げられることが多くなりました。
これらの観点をマネジャーの教育訓練に組み込み、同質的メンバーでは生み出せない創造性のある成果物を創出する活動体を作り上げれば、組織に大きな価値をもたらす可能性があります。よって、マネジャー育成の3つめのポイントとして、多様性のやりくり(ダイバーシティ・マネジメント)訓練を業務に組み込み実施する。専門機関の多様性訓練や個別指導を仰ぐことをご推奨いたします。
まとめ
生産年齢人口減少時代におけるマネジャー育成のポイントは、
ポイント1:知識臨界点を上げる(戦略思考・組織的思考訓練)
外攻め課題の重点化思考と組織運営する知識のシャワーを大量に注ぎ込み、体験・経験できなかったプチマネジメント不足分を補う訓練をすること
ポイント2:ボス・マネジメント(志の高いゴマスリ訓練)
今後、現場・職場では、重層的なボスの存在が想定される。そこで、理論、モデルを体得し、ボスをうまく使い、部下や他部門を掌握し組織の使命を果たすしくみを作ること
ポイント3:多様性のやりくり(ダイバーシティ・マネジメント訓練)
男女差、年齢差、異なる雇用形態、グローバル人材などを多様なメンバーをやりくりするスキルを磨き、同質では生み出せない創造性ある成果を生み出す
参考文献
リクルートワークス研究所(2015年6月)「2025年 働くを再発明する時代がやってくる」クーゼス=ポスナー(1978),『信頼のリーダーシップ―こうすれば人は動く』
Pelz,D.C(1956),Some social factors related to performance in a research organization.Administrative Science Quarterly.
豊田貞光(2013),『リセット力で今からの脱出』産業能率大学出版部

主に成長戦略実現のための事業変革指導、業績V字回復指導、人中心のICT構築・運用指導等を実践。また、マネジメント研修、リーダーシップワークショップ等に関わる。
著書に、「『リセット力』で今からの脱出」(産業能率大学出版部)、記事に、「先取りグローバルスキル」,日経CAREEERマガジン,Vol.1,2012. 論文に「ブリッジSE知識創造の場と支援プログラムの実証研究」,日本創造学会論文誌,第11号2007.論文賞受賞などがある。
※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。