2019年5月29・30日の2日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日経BPでは、「CHO Summit2019」を開催した。働き方改革、ダイバーシティ、人手不足、健康経営、会社とそこで働く人々との関係性が大きく変わってきた。それら諸問題は、今や経営戦略における最重要テーマであり、CHO(Chief Human Officer=最高人事責任者)という職責も生まれてきた。本サミットでは、人にまつわる様々な課題とその解決策について、先進的な取り組みを実践する企業トップや有識者による講演を行った。その中からロート製薬代表取締役会長兼社長山田邦雄氏による「常識に縛られない働き方へのチャレンジ」の内容をお届けする。
(構成=MARU、写真=吉澤咲子)

新しい時代の新しいシステム作りが急務

 今、働く日本人は本当に幸せなのか。これをまず考えてみたいと思います。日本の労働生産性は非常に低く、ある統計によると世界で22番目だそうです。睡眠時間が短く、労働時間が長い。そして、一番ショックなのは、熱意のある労働者の出現比率は世界で132位、また別の統計によると、自社を信用していない労働者の出現率は世界1位だそうです。これが、どういう基準なのかは明確ではないのですが、何らかの基準では正しいとすれば、日本で働く人の多くは、自分が働く会社を信用していないということになります。

 国土が狭く、資源も少ない中で、個人の労働力を会社が生かしてきたはずなのになぜなのか。一言で言うならば、高度成長期に作ったシステムとそれを前提にした企業の仕組み……つまり、標準化や優等生を求める企業と、それに沿った人材を育てるための教育が今の時代に合わなくなってきているということなのです。

ロート製薬 代表取締役会長兼社長 山田邦雄氏

 現在、ダイバーシティやインクルージョンに向けて、日本は少しずつ変わってきています。とは言え、その歩みは遅く、長期的には少子高齢化で経済的発展が望めない状況にあります。

 では、我々人事に携わる人間がこれからやるべきことは何か。新しい世代の新しい会社へと、今こそ、ダイナミックに変革が必要です。

社員一人ひとりが、社会を支える戦力である

 我が社の取り組みについてお伝えしたいと思います。私が社長に就任してから20年、一つには女性の活躍を促進することを目指してやってきました。「ロート製薬は目薬の会社」というイメージが強いかもしれませんが、現在のビジネスの半分以上は化粧品・ビューティ関係です。つまり、女性的な感性が非常に重要であることから、当時まだ男性中心の社会の中で、女性の持つポテンシャルを生かすということを進めてきました。昨年は産休復帰率が100%となり、実質的に女性が働きやすい企業になったという実感があります。

 また、3年前に副業を解禁しました。人材という意味では、一人ひとりの力を発揮して会社のために働いてほしいという気持ちはあります。その一方で、社員一人ひとりが社会を支える戦力ですから、少子化の中にあって、それぞれがマルチな働き方をし、社会に貢献するべきだと考えています。許可制ではなく届出制とし、現在全社員の5%、80人ほどが副業を持っています。社外での副業と同時に、社内で別の役割を持つ社内副業という形も解禁しました。

 具体的な内容としては、所持している資格を生かすこと、地元の産業をPRするボランティア、出身大学で講義をするということなどです。動機としては、現在の給料を補填したいという人はおらず、自分の能力を生かしたい、キャリアを積みたいという成長意欲がモチベーションとなっています。

 副業に関しては、企業側が導入を見送る理由として「本業が疎かになるのではないか」という心配の声もあるようですが、副業体験者からは「社外での経験を生かして、自社の仕事をしっかりやらなくては」「自社での仕事が非常に価値があるものだと気づいた」というような声を多く聞きます。我が社の実例ではむしろ、本業のマイナスどころか、プラスの効果の方が大きいように思います。