これからのCHOに必要な3つの視点

1)多様な働き方が用意されているかどうか

 働き方の多様性が求められる背景にはやはり、産業構造の急速な変化と人材不足があります。これまでは「この靴が履ける人だけ、来てくれればいい」という考え方でしたが、人が不足している現在では、一人ひとりの足に合わせた靴が必要です。

 特に、平均寿命が伸び続けている今の高齢者は、これまでの高齢者とは違い、働くのに十分な能力と体力を持っています。優れた人材の宝庫でもありますが、一方で、多様な働き方の提示ができない限り「あなたに履ける靴はない」と切り捨ててしまうことになります。

 さらに、年功序列でもなく、フルタイム雇用でもない。一律化していた古い人材評価制度はもはや通用しません。これからは、どうやってフェアに評価をするのかが大きな課題です。長期的な視点に立って、多様な働き方をしている人を評価する軸をどう作るかを考えていかねばなりません。

2)必要な能力を身に付けられる機会があるか

 企業にとって必要な能力は変わりますが、共通して言えるのは、現場の経験者は必ず必要だということ。データを分析し、活用できる時代になったとしても、データを正確に分析するには現場の経験がないと、本当に何が起きているのかは見えてきません。

 例えば、雨が降った時に店の売り上げが上がるというデータが出てきた時、現場で何が起きているのかは、現場にいた人にしか分かりません。課題がある時にデータ分析をし、現場の情報を使って、解決策を出す必要があるわけです。ビッグデータの時代だからこそ、現場の経験者なくして企業の戦略に落とし込んでいくだけの分析はできないと言っても過言ではありません。

 また、データ整理やデータ管理をする際、AIが評価しやすい形でデータを入力できるのも現場経験者です。テクノロジーの時代だからとデータだけを集めてIT人材を雇い、現場をリストラしてしまうようなことになると、大切なノウハウはあっという間に消え去ります。このようなことが、実際に多くの企業で起きているのです。

3)外に向かって開かれている組織かどうか

 現在、技術革新だけではなくグローバル化も急速に進んでいます。これは以前のグローバル化とは意味合いが違います。世界中で、国境だけでなく、企業の枠を超えた形で人材や知識の交流が行われ、オープンイノベーションが生まれていますが、日本はこの世界の動きから完全に取り残されています。国内であっても早い段階から他社への出向などを通じて異文化体験をさせる、人事交流を行っていくなどの仕掛けが必要です。

 さらに、技術革新の弊害とも言えるのですが、社内教育にかける予算が減り、長期的なキャリアを持つための教育の場が失われています。

 経営者としては「人材教育にお金をかけて、結局出ていかれると元も子もない」という懸念もあるかと思いますが、いい人財を育ててこそ、会社は強くなります。外に積極的に出ていけるほどの人材を育てることは、自社の強みにつながるのです。CEOが人材の流出を必要な投資として捉えられるように説得するのは、ほかでもないCHOの役目です。

 そして、技術革新に合わせて人を変え、ビジネスを変え、連携の仕方を変えていくためには、組織全体の再編成能力が必要となります。経営側も人事は人事、経営は経営、という古い体制と役割分担は通用しません。これまでの縦割りの構造を横に広く展開していくために、人を動かし、組織を再編成していってください。CHOが持っている人事に関する詳細な情報を使い、あるべき経営に持っていくことが、今CHOに課せられた重要課題なのです。