2019年5月29・30日の2日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日経BPでは、「CHO Summit 2019」を開催した。働き方改革、ダイバーシティ、人手不足、健康経営、会社とそこで働く人々との関係性が大きく変わってきた。それら諸問題は、今や経営戦略における最重要テーマであり、CHO(Chief Human Officer=最高人事責任者)という職責も生まれてきた。本サミットでは、人事にまつわる様々な課題とその解決策について、先進的な取り組みを実践する企業トップや有識者による講演を行った。その中からKDDI人事本部長の白岩徹氏による「会社への変革をもたらすHRの実現を目指して」のセッションを振り返る。
(構成=岩辺みどり、撮影=吉澤咲子)

KDDI人事本部長の白岩徹氏

「守りの人事」から「攻めの人事」へ変わる時

 今、通信業界は大きく変わろうとしています。弊社も、通信事業だけでなくライフデザイン事業へと変革を進めています。個人のお客様の「通信」を真ん中に置きつつ、グループ会社やパートナー企業と連携して金融やエンターテインメント、教育など、それぞれの体験価値を提供していくのです。法人の場合でも、「通信」を中心に置いたビジネス創造を行っていきます。

 業種を超えた競争が激化し、これまでにないスピードで技術もサービスも変わりつつあります。他業種からの大手の新規参入もあり、脅威を感じます。その一方で、日本の人口は減少しており、それは顧客の減少を意味しています。国内通信の成長も鈍化している中でも、新規参入もあり、顧客を取り合う時代になっている。大手だからと安心することはなく、このままだと生き残れないのではという危機感を常に持っています。

 そんな猛スピードで変化する時代に人事に求められることとは何なのか、改めて考える時が来ているのではないでしょうか。社員力、組織力、エンゲージメントの低下を防ぐためにも、「守りの人事」から「攻めの人事」へと変わる時です。制度の運用や人事評価には、ミスは許されません。守るべきものはもちろん守らなくてはいけない。

 しかし、ミスは多少しても変革を起こすためには、新たな企業文化を作っていく必要があります。企業は持続的成長をしなければ衰退していくのみなのです。全社員の個々のエンゲージメント向上こそが、企業パフォーマンスの向上へとつながり、生き残り策だと考えています。そのためにも、守りと攻めが一体となった人事が求められています。

 企業を支えるのは人であり、その人をいかに強くしなくてはいけないかという思いを持ち、まず従来のHR組織を人事部(制度・給与厚生・労務)と人財開発部(採用・異動・教育)に再編しました。攻めと守りに分けたのです。フィロソフィの改訂を実施し、女性活躍を中心としたダイバーシティを推進するとともに、グローバル事業へも人事面での貢献を始めました。また、2019年3月からは働き方改革・健康推進室も作り、社員が働きやすい環境を整備します。それがいよいよ5月から機能し始めましたが、まずは働き方改革グループの42人が社員のカウンセラーとして全社員と最低でも年2回の面談をします。問題が小さいうちに芽を拾い、対応をしていくためです。また、適切な勤務管理を現場のカウンセラーが行い、産業医や保健師と連携する体制も構築しました。

 人事部、人財開発部、働き方改革・健康経営推進室の3部署が一つとなって社員に寄り添い、経営層と連携を取っていく姿勢を示すために「One HR for All」というスローガンを6月に策定しました。全社員のために、そして一人ひとりの社員のために、人事が働くということを示しています。