360度評価、1on1など、人と組織の活性化を目指すこうしたノウハウは、働く人と組織が対等となる文化を浸透させるためのものだ。組織では、主体的に行動するプロフェッショナル人材を育成する必要性が高まっている。一方で、組織で働く人も自らのキャリアを自己選択と自己責任でつくる時代になりつつある。では、そのベースとなる文化とはどんなものか。組織の中で、この文化を醸成するヒントを一般社団法人組織内サイレントマイノリティ代表理事 須東朋広氏に聞いた。

組織文化形成のカギは「開発」と「発達」

――人と組織が対等にある文化を、須東さんは「デベロップメント文化」と定義されています。それはどういうものでしょうか。

須東朋広氏(以下、敬称略):デベロップメント(Development)とは人材領域で非常によく使われるキーワードです。例えば、キャリア開発(Career Development)もそうです。私は、原語が意味する通り、人と組織には「開発」と「発達」の両面が欠かせないと考えています。開発とは、働く人の潜在能力を引き出し伸ばすこと。発達とは外界によく(鋭く)適応した状態に達することを指します。

――デベロップメント文化を実現できているのはどんな企業でしょう。

須東:それにはまず、組織における優秀な社員の人材像を言語化し、全社で共有していなければなりません。また、そのことを浸透させるインフラを整備することも重要です。例えば、「実力主義型終身雇用」を掲げているサイバーエージェントはその一つです。新卒入社でも実力があれば社歴にかかわらず厚遇されます。新卒入社の社員でも社長や取締役に就任しています。また、そのような人が役割を降りた後も、長期で雇用していくための人事制度を構築しています。

 また、サイボウズの「100人いれば100通りの人事制度」という取り組みも同じですね。「我が社には多様性がない」と考えるダイバーシティ経営ではなく「社内にはすでに多様性があって、まだ受け入れていないだけではないか」と逆転の発想をする。多様性を受け入れるインクルージョンが重要だと位置づけ、「ウルトラワーク」(場所も時間も自由に勤務できる)に加え、男女ともに育児休暇を最大6年間取得可能といった制度を整えました。100人100通りの働き方を、社内に宣言し実行しているところが素晴らしいです。

一般社団法人組織内サイレントマイノリティ代表理事
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東朋広氏
最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会を立ち上げ、事務局長として8年半務める。その後、インテリジェンスHITO総研主席研究員として、中高年、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の雇用やキャリア研究に取り組む。2016年、一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げ、代表理事を務める。主な著書に『CHO~最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社)、『キャリア・チェンジ』(生産性出版)など。