――デベロップメント文化を推進できるのはどんな人材でしょうか。つまり、イノベーション創出できるスキルを持っているということですか。

須東:はい。イノベーションの核心は、不安・不満・不便などの社会課題をビジネスに展開していくこと。そのための問題発見力・仮説構築力を持った人です。こうした人材は、従来型組織に見られた「カリスマリーダー」や「シンボリックリーダー」ではありません。ありのままにふるまい、お互いが助け合い、自らの役割を果たし、共に創造することができる人です。こうした人材を育成するには、組織の中で適任な人材に権限を与え、それぞれの専門分野でリーダーとしての役割を担う機会を提供することが近道です。

須東氏提供
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 これから、働く人と組織の関係は変わっていきます。従来、組織で働く人の多くは与えられた作業をこなす存在でした。現在では、「ヒト・モノ・カネ」と称されるように人材は経営資源だという考え方が浸透しています。さらに今後は、一つの仕事に対して組織内外の人を集め、その仕事に適したネットワークを築く時代になっていきます。人と組織が対等の関係になるのです。なぜなら、産業の高度化や経済のグローバル化などを背景に、ますます多様なリーダーシップが求められるようになり、一人のリーダーでは対応しきれなくなってくるからです。こうした、組織にいるすべての人材の能力を最大限に引き出す「シェアード・リーダーシップ」が必要となります。

CHO(CHRO)はデベロップメント文化の推進役

――人と組織のあり方を変革し、組織文化まで変えていくためには、人事が現場に出ていくことが大切ですね。

須東:はい。ポイントは2つあります。人事は「人を知る」ことと同様に「ビジネスを知る」ことが必要です。

――「人を知る」とは何でしょうか。

須東:社員一人ひとりが何をやりたいか、どうしたいのかを聞きながら、そのポテンシャルを引き出していくことです。それには、人事が各職場のリーダーとタッグを組んで取り組んでいく必要があります。

――では、「ビジネスを知る」とは。

須東:人事が自社のビジネスとそれを取り巻く環境変化を予測すること、高い感度を持つことが必要とされます。人材の採用・育成・配置・評価を部分最適化するのが従来のヒューマンリソースマネジメントです。そうではなく、組織の中にいる人を把握したうえで、経営者に組織の成長に適した人材がいるかどうかを進言することが求められます。管理職だけではなく、すべての社員が対象です。これは、CHO(Chief Human resource OfficerまたはCHRO)の責務です。

 そして組織が「保有している力」、つまり自社のコアコンピタンスと文化をしっかり把握することが大切です。企業は、ますます激しくなる環境変化の中で「変えるべきものは何か、守るべきものは何か」という葛藤に常にさらされます。人材採用や異動、組織再編の際にも、コアコンピタンスを生かせない選択や、自社の文化とかけ離れた選択をしてしまうと、企業の力を弱める恐れがあります。