――最長で1年間、ベンチャー企業で働く社員をどうやってサポートしているのですか。

原田:移籍者の一人ひとりにメンターがつきます。大企業の人事やイノベーション部門のトップ、キャリアコンサルタントの方などが、ボランティアや副業として取り組んでくれています。移籍者を経験豊富な人がサポートできるのが大きなメリットです。社員を貸し出す大企業には、移籍者の週次・月次レポートや、移籍終了後のアセスメント資料も提示しています。

日本企業に新しい人材流動化の流れを作りたい

――大企業でイノベーションを担う人材育成が目的ですから、移籍者の年齢層は若いのでしょうか。

原田:はい。今までの実績での平均年齢は約32歳です。

 その一方で、これまで約300社の大企業と話してきて、その7割が、上の年齢層の社員に余剰感を持っています。日本企業のピラミッド構造な組織に対して、人口が逆ピラミッドになっていることを痛感します。本当は優秀なのに、大企業の中で、チャンスやポストを与えられていない社員はたくさんいるのではと思います。もったいないと感じます。

 社員を組織の外に出す、社員が組織の外で学びを得てくることが、企業の利益につながる。この考え方を浸透させることが大切です。

――今後の課題について聞かせてください。

原田:日本企業の人材流動化がミッションです。流動化といっても欧米のように、人材が転職しながらキャリアアップすることが、必ずしもベストではないと思っています。日本企業の長所は、組織と個人の信頼関係の強さ、エンゲージメントの高さではないでしょうか。例えば、メジャーリーガーとして活躍した黒田選手が広島カープに戻ってきたことを称賛するのは、とても日本らしい価値観だと感じています。

 組織の外に行くこと自体に学びがあるのは事実です。今はまだ、「人材の流動化」と、企業と社員の「絆」がトレードオフになってしまっています。社員が組織から出て、また戻ってきても大丈夫な社会になれば、新しい人材流動化になるのではないでしょうか。レンタル移籍をきっかけに、その流れを作りたいと思っています。

原田かおり(はらだ かおり) 日経BP 総合研究所 HR事業部 ヒューマンキャピタルOnline編集長
原田かおり

出版社を経て、2000年 日経BP社入社。カスタム出版やオウンドメディアのプロデュースを数多く手掛ける。ゴールドクレジットカード会員誌『クオリテ』(東急カード)、Webマガジン『大人の心得帳』(NTT東日本フレッツ光/東急文化村)など編集長として企業機関誌やオウンドメディアの創刊・リニューアルを多数経験。2018年2月、「社内コミュニケーション改革セミナー」全体プロデュース・講演。2019年5月、「CHOsummit2019」全体プロデュース・講演、ヒューマンキャピタル2019「働きやすい組織と環境の新しいカタチパネルディスカッション」モデレーターなど務める。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。