人事担当者の課題は、会社の「ひとを採る、育てる、辞めさせない」ことだ。新規事業を担う人材をどうやって育成するか、会社によるサポートを経てキャリアを積んできた社員が辞めてしまうのをどう防ぐか――これらを解決するために、社員のエンゲージメント向上が注目されている。具体的には、社員が自分の仕事にやりがいを感じるようになる、または社員が会社に愛着心を持つようにするための取り組みだ。2018年6月、東証一部上場した株式会社アトラエでは、エンゲージメントの現状を数値化し、定期的にその変化を把握できるITツール「wevox」(ウィボックス)を提供している。2003年創業の同社は、出世・昇進という概念もなく、全社員に360度評価制度を導入しているホラクラシー組織としても知られる。wevoxプロジェクトマネージャーの森山雄貴氏に、エンゲージメントに対する考え方と今後のAI活用について聞いた。
(取材・文=原田かおり:ヒューマンキャピタルOnline編集長)

仕事に対する愛着と、組織に対する愛着

――wevoxは、いわゆるHR Techのひとつですね。wevoxで可視化できるエンゲージメントとはどんなものなのでしょうか。

森山雄貴氏(以下、敬称略):組織に対するエンゲージメントは二つの要素で構成されていると考えています。一つはワークエンゲージメント、もう一つは従業員エンゲージメントです。ワークエンゲージメントとは、いかに生き生きと仕事に取り組んでいるかという「仕事に対する愛着」です。従業員エンゲージメントとは、自分の会社を家族や知人に薦めることができるかという「組織に対する愛着」です。開発当初は、ワークエンゲージメントの方に着目していました。ですが、「自分の仕事が楽しい」というだけでは組織に所属する意味がありません。「一緒に仕事を取り組む仲間も財産のひとつだ」という組織に対する愛着の大切さも実感してほしいと考えました。wevoxの「vox」はラテン語で声を意味します。エンゲージメント向上は経営者や人事担当者だけの課題ではありません。組織全員で取り組んでほしいという思いを込めています。

株式会社アトラエ 森山雄貴氏
株式会社アトラエ wevoxプロジェクトマネージャー
森山雄貴氏
2012年、株式会社アトラエ(現:東証一部上場)に新卒入社。求人メディア「Green」のエンジニアチームにてチーム運営を経験した後、新規事業開発や営業活動などを経て、現在は、組織改善プラットフォーム「wevox」の事業責任者を務める。エンゲージメントを活用し、世の中に「イキイキと働ける組織」をよりいっそう増やすべく取り組んでいる。

――ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントには相関関係があるのですか。

森山:はい。業種や企業規模、外資系企業か日本企業かでも傾向が変わります。例えば、ワークエンゲージメントが高いけれど従業員エンゲージメントが低いのは、ベンチャー企業や外資系企業などに見られる傾向です。逆に、ワークエンゲージメントが低く従業員エンゲージメントが高いのは日本企業によく見られます。社員の生産性を上げるなら、ワークエンゲージメント向上が第一です。一方で、離職防止が課題なら、従業員エンゲージメント向上に取り組むことが必要となります。