社員が働きたい企業・働き続けられる企業の指標として、健康経営優良法人を目指す動きが活発になっている。健康経営の実施によってROA・ROSいずれにおいても利益率が上昇する傾向も明らかになってきた(日経Smart Work「スマートワーク経営研究会」2018年6月)。また、就活生のアンケートでも「従業員の健康や働き方に配慮している」企業で働きたいという回答率が4割を超えている(経済産業省、2018年9月)。認定を受けるポイントは「見える化」だ。

 ダウンロード数が400万を超えた健康アプリ「FiNC」(フィンク)を提供するスタートアップFiNC Technologiesでは、企業の健康状態を可視化するサービス「FiNC for BUSINESS」も提供している。同社の長田直記氏に、健康経営に対する考え方と、健康経営を可視化することで得られるメリット、今後の展望を聞いた。

取材・文=原田かおり
ヒューマンキャピタルOnline編集長
日経BP社 日経BP総研 コミュニケーションラボ 主任研究員

健康経営のPDCAを回す

――2018年9月に約55億円の第三者割当増資を実施され、出資企業は資生堂、ロート製薬、NECなど19社に及びます。消費者向けのアプリ「FiNC」が主力だそうですが、その法人向けサービス「FiNC for BUSINESS」について教えてください。

長田直記氏(以下、敬称略):一言で言うと、健康経営のPDCAを回すことができるサービスです。これを活用すれば、健康経営優良法人にも高確度で認定されることも可能です。まず、「FiNCウェルネスサーベイ」で社内の状態を可視化し、自社の課題を把握します。そして、その課題を解決するソリューションとして、「FiNC @Work」、「FiNCウェルネスラーニング」を用意しました。この3つで構成しています。

FiNC Technologiesウェルネス経営事業本部ウェルネス経営事業部長 長田直記氏
2004年に日本ユニシス株式会社に入社。流通向け営業部門やアウトソーシングプロジェクトのサブPMを務め、その後、日本ユニシスの東南アジア進出に伴いシンガポール駐在事務所の立ち上げを推進。2015年にFiNC Technologiesに入社後、人事部門を経験したのち、現在はHR向け営業部門の責任者を務める。

――御社が考える健康経営とはどのようなものでしょうか。

長田:目指すゴールは、すべての社員が生き生きと働くことです。昨今の働き方改革では人事制度や業務プロセスの改革など、ハードの部分に注力している例が多い印象があります。私たちは、社員のメンタルやフィジカルなどソフトの部分をいかに高め、生産性を向上していくかに注力したいと考えています。従来は、社員の健康というと、フィジカルをイメージすることが多かったと思いますが、近年は、社員一人ひとりが生き生きと働く、その結果、組織の生産性が向上していくことを狙いとするようになりました。そのために、「FiNCウェルネスサーベイ」では社員のフィジカル、メンタル、エンゲージメントの3つの観点を測定します。

――最近はエンゲージメントのサーベイも注目されていますが、その3点を同時に測定するのはユニークですね。

長田:厚生労働省の指導により、社員の健康診断はもちろん義務化も手伝って最近ではストレスチェックも広く行われるようになってきたと思います。ただしこれは、現在ストレスが高い社員を見つけて、ストレスが高い状態を下げるためのサーベイです。ストレスの高低は分かりますが、その数値だけで業績が上がる組織へ変えていくことは難しいのが実情です。そこで、業績に貢献するエンゲージメントの指標も併せて可視化しています。

 社員のパフォーマンス向上を診断するための軸は2つあります。エンゲージメントが高いか低いか、ストレスが高いか低いかという軸です。もちろん、「エンゲージメントが高くストレスが低い状態」が理想的です。この2軸の根本をつかさどるのは、フィジカルの部分です。例えば、「エンゲージメントが高く、ストレスも低い状態」の社員でも週3日も体調不良で会社を休んでしまうとしたら、結局、この社員は企業の業績に貢献できていないことになります。