ビジネスの急速な変化に対応するために、社員研修の内容も方法も変わりつつある。SIベンダーのセゾン情報システムズでは、いわゆる「バイモーダルIT」(※)スキルを身につける新しい新入社員研修を実施、2019年にはそこから新事業を立ち上げた。今後、この研修を既存社員はもちろん、学生インターンや中途採用も対象に行っていくという。同社に取材したところ、こうした研修に取り組む背景には硬直した組織風土に危機感を抱き、管理や上意下達を一切やめ、権限委譲とノールールを浸透させてきた風土改革があった。この改革を主導する、コーポレートサービスセンター 副センター長 兼 HRサポート部部長の小山和也氏に聞いた。
(※)バイモーダルIT:コスト削減や効率を求める「守り」とされる「SoR(Systems of Record)」(モード1)と、新しい付加価値を生み出す「攻め」とされる「SoE(Systems of Engagement)」(モード2)の双方を推進していく考え方を指す。

取材当日は青山学院大学と共同の研修が開催されていた。就業時間内に実施しており社員は自由に参加できる。社内外を巻き込むセゾン情報システムズの新しいワークスタイルと組織風土が目に見えて分かる(出所:セゾン情報システムズ)

巨額の損失を出してしまった組織風土

――大型開発案件の遅延という失敗を機に、大がかりな改革に踏み切ったと聞いています。

小山和也氏(以下、敬称略):2016年に開発案件の遅延によりお客様より大型の損害賠償請求を受け、50人の希望退職者を募る事態にまで至りました。この時に何が原因だったのかを徹底的に振り返り、技術開発力が不足している、プロジェクトマネジメント力がない、上意下達の閉鎖的な組織風土という3つの課題をあぶり出しました。SIベンダーとして、当社の社員は要件定義から設計までの上流工程を担当しますが、実装は外注していたためプログラミング技術のある社員が少ないという問題もありました。

―― その課題に対して、どのように改革に着手したのでしょうか。

小山:この中で最も大きな課題は組織風土で、根本を変えないと他を改革しても意味がないと気づきました。そこでノルマ達成といった仕事の進め方はすべて廃止しました。上意下達になりがちな「管理」と名前のついた組織や部門も一掃し、人事制度も「人事プログラム」と改称するところから始めました。管理して悪者を見つけるのではなく、社員同士の共感や共鳴を大事にしてお互いに言いたいことを言える社風にして仕事を進めようと考えたのです。

 例えば「売り上げ目標1億円」を達成するために、従来は「コールドコール1日100件」「1日5軒訪問」など時間単位で考えたノルマ的行動に落とし込んでいました。でも、この目標を100%達成しても売上高1億円には届かないことも多い。一方で、共感・共鳴からスタートする手法では「今月は製造業に注力します」といった役割を設定します。そうすると上司の声がけも「今日は何件電話した?」ではなく「製造業を回ってみて手ごたえはあったか?」となる。管理するのではなくプランニングそのものをサポートするオペレーションに変わります。こうすると電話の件数や、さらに何時間働いたか、どこで仕事をしたかといったことは関係なくなります。管理から解放されて、役割や使命に向き合えるようになるわけです。