デスクを並べて働いていても、隣の同僚や自分の上司の給与の金額を知っている人は、滅多にいないだろう。まして、他の支社で働く社員ともなると、顔も知らないのに給与なんて……と思うだろうが、いまや欧米企業ではそれが可能になりつつある。北欧を皮切りに、欧米では少しずつ「給与の透明化」が進んでいる。しかもこれが、社員のモチベーションアップにつながっているというのだ。日本企業の社内ではなかなかオープンにできない給与を公開できる理由を探った。
(写真:123RF)

SNSで海外支社の同僚の年収が分かる

 あなたは隣で働く同僚の給与が分かったら、どう思うだろうか? 会社の中で、社員の階層別給与テーブルや個人の年収まで赤裸々に公開していこうという企業が、欧米に増えつつある。今回のキーワードは、「Pay Transparency(給与の透明化)」だ。

 例えば、アメリカのITベンチャー企業、Bufferでは社長や役員を含む社員全員の年収、さらに株式の配当分や1株あたりの評価額まで公開している。職務や階層による基本給に加え、その成果に応じた加算割合もされているため、自分と同階層の社員の年収が高い理由も分かる。Bufferの社員は基本的にリモートで仕事をし、11カ国22都市に分散しているため、各地域に応じた生活水準に合わせた給与テーブルも公表されている。

 この動きは、ベンチャーだけではなく大企業でも進みつつある。例えば、アメリカのスターバックス社では、社員の持ち株配当を社内公開し、給与テーブルを中途入社候補者に公開する方法をとっている。これによって、スキルや経験に応じた社内レベルに合わせた給与設定ができるからだ。社員個人の年収を公開する会社もあれば、職務や階層ごとの給与テーブルを公開する会社もある。また、Slackやイントラネット、社内SNSを活用して、社員同士が匿名で自分の年収や職務レベルを公開し合うことを推奨している会社も出ているという。

今も深く残る男女の賃金格差

 実はこうした給与公開の背景には、なかなか解消できない男女の職務や賃金格差がある。男女雇用機会均等先進国である欧米であっても、順調にその差が縮まっているとは言えず、欧州委員会の調査によると(詳しくはこちら)2014年の時点でEU諸国の男女賃金差は16%。2006年の17.7%から2012年の16.4%へと多少改善したものの、それ以後の経済危機などで全体の賃金も下がり、近年この差は縮まっていない。賃金額で表すと、女性は男性と同じ給与をもらおうとした場合、年間59日を無償で働かなければいけないというのだ。

G7諸国におけるフルタイム労働者の男女賃金格差(2017年)
(図1)ここでの男女賃金格差とは、男女の所得の中央値で除した数値を示す。フランスは2014年、ドイツ、イタリアは2016年の数値(出所:OECD OECD Databaseより作成)
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