新卒一括採用や長期雇用制度など日本企業独自の雇用慣行は限界を迎えつつあります。そして、こうした企業で働く人も「組織で働く意味」をあらためて問い直そうとしています。では、多様性のるつぼであり新たなビジネスが次々に生まれる海外企業では、働く人と組織のありようはどうなのでしょうか。組織で働く意味を問い直すヒントとして、この連載では海外企業の最新リサーチや、その例をもとにした日本企業の取り組みを取材します。
(原田かおり=日経BP 日経BP総研 ヒューマンキャピタルOnline編集長)
(写真:123RF)

欧米企業ではステークホルダーへの強いアピールになるERG

 優秀な人材を確保し、長く留まって働いてもらうことは、転職サイクルが早い欧米企業では最も重要な課題だ。多様な人種や価値観があふれる社会において、働きやすさは大前提。Diversity and Inclusion(D&I)にどの程度真剣に取り組んでいるかと活動内容を精査されるステージにきている。D&Iは、もはや社員への福利厚生やCSR的な位置づけでは済まず、優秀な人材確保、ひいては企業の生き残りと発展をかけた策である。

 そのD&Iの動きの中で、キーワードになっているのが「ERG(Employee Resource Groups)」だ。「従業員リソースグループ」と訳されることが多いが、人種、性別、年齢、宗教、文化などが異なる社員が、多様で包括的な文化を会社に根付かせるために同じテーマや目的のもとに集い、活動するグループのことだ。例えば、「女性」「LGBT」などのグループは日本企業のD&Iでもすでに取り組まれているが、欧米では他にも「ヒスパニック系」「アジア系」など人種や、「ミレニアル世代」「テクニカル系」など世代や職種などのグループが存在することもある。「元軍隊従事者」というグループが多くの企業にあるのはアメリカ。そうした国民性や会社のカラーを反映し、セールスフォース、オラクル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、AT&Tなど多くのグローバル企業が積極的にERGに取り組んでいる。

 ERGがこれまでのD&Iの取り組みと大きく違う点は、社員自身が主体であることだ。人事やダイバーシティ推進室といった組織から働きかけるのではなく、社員が自ら必要と思うグループを立ち上げ、所属し、必要なことを考えてアクションをとっていくことが大前提となる。

 さらに、そのミッションやアクションが、会社にとって利益をもたらすものであるべきだという、企業の事業に対する明確なプラス要素が不可欠だ。

 あるグローバル企業の米国本社のERG資料には、次のように定義されている。

 「ERGとは、多様で包括的な職場環境を作るための、自発的で、社員主導のグループである。ミッション、バリュー、ゴール、ビジネス実践、客観性を持ち得ているグループとして存在し、社員のエンゲージメントを高め、市場へのリーチを拡大し、将来のリーダー育成などの利益を会社にもたらすものである」