国を挙げた働き方改革によって、蔓延していた長時間労働改善にようやく歩みだした日本。一方で急速な経済成長の真っ直中にある中国では、「午前9時から午後9時まで週6日働く」という意味の“996”工作制(労働スタイル)がIT産業を中心に常態化していた。しかし、今年に入り、この働き方に対する物議がわき上がり、中国全体を巻き込む議論になっている。この問題の背景にあるものは何か、また、日本企業が中国進出の際に注意すべき点は何だろうか。
苦労の先に、栄光ではなく集中治療室が待っている
急速な経済発展を遂げる中国。OECDのデータによると、一人当たりの労働生産性は2000年から2017年にかけて名目489%も上昇している(日本は同61%)。近年は多少鈍化しているとはいえ、まだまだ右肩上がりの成長を続けているが、その成長の中心にあるのが、IT産業だ。いまや北京の中関村や深センは、中国のシリコンバレーと呼ばれる。ユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の未上場企業)も180社を超えると言われ、その多くがIT企業であり、中国政府もテクノロジー分野でのさらなる発展に力を注いでいる。