目標管理型のマネジメントは、管理しているだけでパフォーマンスの向上を支援していません。しかし、これからのマネジメントはむしろ一人ひとりのパフォーマンスの向上を支援するものでなければなりません。マネジャーには「管理者」から「支援者」に役割を変えることが求められているのです。このことはマネジメントの対象が、これまでの目標管理では扱われてこなかった領域に移っていくことを意味しています。

1 on 1はマネジャーにとっての経験学習の場

 個々人に応じた成長とパフォーマンス向上を支援するためのマネジメントのことを「ピープルマネジメント」と呼びます。一部のリーダー候補だけを育てるのではなく、すべてのメンバーの成長を対象とするため、「ピープル」という表現が用いられるのです。「ピープル」と複数形になっていますが、内容は一人ひとりに応じて異なる支援を行うことです。

 人が何に対してモチベーションを高めるかという内的動機はもともとすべて異なるため、一人ひとりに応じたパフォーマンス向上を支援するためには、部下を内発的に動機付けることが必要です。また、部下のポテンシャルを理解して、一人ひとり違った成長の手助けを行うことが必要とされます。これまでのような外発的で画一的なやり方から、内発的で多様なアプローチへの180度の転換が求められるのです。

 そのようなピープルマネジメントスキルを高めるためには、経験学習が不可欠です。ピープルマネジメントスキルは、部下とのコミュニケーションを実践し、その経験を振り返って気づきを得て、それを踏まえてさらに実践するというサイクルを繰り返しながら学習を重ねることなしに向上しないからです。そのため、職場においてマネジャーがピープルマネジメントを実践できる場が必要とされます。

 従来の目標管理制度では、上司と部下の面談機会は期初、中間、期末の年に3回くらいしかありませんでした。それではアジャイルなマネジメントが難しいことから、上司と部下がもっと頻繁に対話を行う、1 on 1(ワンオンワン)を導入する企業が増えています。1 on 1はメンバーの成長とパフォーマンス向上を第1目的として設定されますが、それは同時にマネジャーにとっての学習の場でもあるといえます。

 「うちのマネジャーはマネジメントスキルが低いから1 on 1はまだ導入できない」と話す人事の方もいます。けれども、そうしてちゅうちょしていると、いつまでたってもピープルマネジメントスキルは高まりません。マネジメントスキルの向上とメンバーの成長は車の両輪のようなものなので、片方だけでは成り立たず、同時に取り組んでいくことが必要なのです。

マネジャー自身のマインドと行動の変革が課題

 1 on 1を導入してピープルマネジメントスキルを高めようとする際、マネジャーは具体的に何をすればよいかが問題になるでしょう。コーチングなどの研修を導入して、型を作ろうとする企業も少なくありません。もちろん、コーチングスキルはピープルマネジメントを行ううえで有益ですが、それは全体の一部であるため、まず、ピープルマネジメントの全体像を描くことが必要です。