1 on 1におけるピープルマネジメントには以下のような要素が含まれます。

●対話による部下理解

 一人ひとりに応じたマネジメントを行うためには、部下がどういう人であるかを理解しなければなりません。それはつまり、その人がどのような内的動機を持ち、何を大切にする価値観を有しているかを知ることです。内的動機や価値観が、その人ならではの強みの源泉となり、成長のためのポテンシャルになるからです。

 その際に求められるコミュニケーションスタイルが「対話」です。問題解決のための議論とは異なり、「この人はそういう価値観を持っているから、そこにこだわるのか」という相手の内面に気づくことから始めるコミュニケーションが対話です。ただ傾聴するだけではなく、相手を理解しようとする姿勢が必要です。

 目標管理型のマネジメントでは部下の内面を理解する必要がなかったため、マネジャーは部下に対してどのようにコミュニケーションをすればよいか、実感として分からないかもしれません。そのため、部下理解のスキルを高めるためにマネジャーが最初に行うべきことは、自分自身の内的動機や価値観を理解することです。それによって、目に見えづらい内面を理解するための感度を磨くことができるのです。

●リフレクション(振り返り)支援

 部下が自分の経験を振り返り、気づきを得て、次のアクションにつなげる学習のプロセスを上司は支援する必要があります。本人の気づきを促す際には、部下に対して質問を投げかけながら、自分自身で考えさせるコーチングスキルが有益です。

 同時に、上司には部下に対するフィードバックスキルが求められます。特に、部下の望ましい行動に対するポジティブフィードバックが重要です。パフォーマンス向上のためには、本人の強みを発揮した行動が強化される必要があるからです。

 目標管理型のマネジメントにおいては、目標と実績のギャップがマネジャーの関心事となり、できていない課題に対して一方的に指摘しがちでした。しかしここでも、マネジャーは自分自身の過去を振り返ってみることが有益です。自分がモチベーション高く成果を挙げていた体験を振り返ってみると、そこでは自分らしい強みが発揮されていたことが分かるはずです。

●目標設定支援

 目標を設定し、それに向けてアクションを行い、その結果を振り返って、さらに次の目標やアクションにつなげるサイクルを、部下が自律的に行うことができるようになるのが目指す姿です。そのためには、目標を上から与えられるのではなく、自分でゴール設定できる力を養う必要があります。

 部下の目標は当然ながらチーム全体の目標の達成に貢献するものでなければなりません。しかし、同時に自分自身が達成したいという意欲を駆り立てられるものであることも必要です。目標設定は組織のニーズと個人のニーズをつなぎ合わせる機能を果たします。

 目標管理型のマネジメントでは目標は上から与えられたため、自分でゴールを設定する力が組織全体で劣化してしまっています。上司が部下の目標設定を支援する際に、まず上司自身の目標が戦略的に考えられ、かつ自分の思いがこもった目標になっていなければなりません。上司自身の目標が上から与えられている状態では、部下の自律的な目標設定を支援することは不可能です。