うつの休職から復職した社員に、体調を崩さずに長く働き続けてもらいたい。そのためにはどうすればいいのか――。これは多くの人事担当者が頭を悩ませる問題の一つでしょう。なぜなら、復職した社員の多くが再休職してしまうからです。
 どうしたら、うつ復職者の再休職を防げるのか?
 この連載では、うつで休職した会社員の復職を支援する「リワークプログラム」を2005年にスタートさせ、プログラムを受けて復職した会社員の3年後の就労継続率は70%と、非常に高い成果を上げている、精神科医の五十嵐良雄・東京リワーク研究所所長に「うつ休職者の再休職防止策」について伝えていただきます。

 私はこれまでに、数多くのうつ患者を診てきました。ビジネス街の東京・虎ノ門で2003年にクリニックを開設した当初、うつ患者のほとんどの人は入院不要で、通院で治療できる軽症の人ばかりでしたが、軽症だからといって治りやすいわけではありませんでした。

 休職して職場のストレスから遠ざかり、休養と服薬によって症状が落ち着いた彼らに、私は「復職可」の診断書を出しました。しかし、しばらくすると彼らの多くが再休職してクリニックに戻ってきてしまったのです。

 「えっ、この患者も? 一体どうして?」

 当時、再休職してしまう患者の多さに、私は医者として自信を失いかけていました。後に調査をして分かったことですが、私と同様に全国の多くの精神科医が、軽症なのに再発を繰り返す、うつ患者に戸惑い、対応に悩んでいたのです。

 その後、私は、通勤するようにクリニックに通ってもらい、職場のような集団の中で対人関係のワークショップを体験すれば、職場に復職できる時期が分かるのではないかと考え、2005年にうつ休職者の復職を支援する「リワークプログラム」を始めました。

 そして、リワークプログラム出席率や、プログラム参加中の本人の様子などから回復度合いと復職時期を判断し、2019年春までに1500人を超えるうつ休職者が復職していきました。

 2012年の調査時点ですでにプログラム利用者の3年後の就労継続率は7割と、プログラムを利用せずに復職した人たちに比べて高い就労継続率を維持するまでに至っています。この数字が持つ価値は人事関係者の皆さんにはお分かりいただけると思います。

症状が落ち着いただけでは再休職してしまう

 さて、人事関係者の皆さんに知っていただきたいのは「休職後の休養と服薬によって、うつの症状が落ち着いた」という状態で職場に復帰しても、その多くはうつを再発して再休職してしまうことです。

 調査データによれば、メンタルヘルス以外の疾患ではおよそ8割が「ほとんど再発はない」のに比べて、メンタルヘルスの場合は復職後に半数以上が「再発を繰り返している」という結果が出ています。

メンタルヘルスの疾患では半数以上が再発を繰り返している
病気休職制度がある企業を対象に「復職後の再発の繰り返し状況」の割合について尋ねた。「休職者がいないためわからない」及び無回答を除いて集計(出典:2013年 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立に関する調査」を改変)
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