健康保険組合などの保険者と医療機関の間に立ち、診療報酬の「適正な審査」と「迅速な支払」という重要な役割を担う社会保険診療報酬支払基金。ICTを駆使した業務の効率化を進める一方、厚生労働省が進めるデータヘルス改革への参入も目指すなど、その事業は大きな転換期を迎えている。16年7月にトップに就任した伊藤文郎理事長に、職員の半数を占める女性への期待と、活躍を促進する組織改革の現状について聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 執行役員、文=谷口絵美)

半数を占める女性の活躍がなければ組織の発展はない

――17年7月、全国支払基金女性交流会が初めて開催されました。大変な盛り上がりでしたね。

伊藤理事長(以下、伊藤):はい。全国の支部から女性職員ばかり200人近くが集まりまして、本当にパワーを感じました。私ども支払基金は70年近い歴史がありますが、今まさに転換期を迎え、業務改革、経営改善を進めているところです。そうした時に、女性の新しい視点や考え方が非常に大事になるのではとあらためて思いました。18年4月にはダイバーシティ推進室を立ち上げ、できれば半数程度は女性に入っていただきたいと考えています。

――基金における女性活躍を含めたダイバーシティ経営の意義について教えてください。

伊藤:私どもの職場は男女の数がほぼ半々です。勤続年数にも男女の差がなく、平均25年。一般の企業に比べて女性がかなり長く勤めていただける組織だと思っています。しかし残念なことに、女性の管理職の数は大変少ないんですね。

 男性と女性には体力面では多少の差はあるかもしれませんが、支払基金においては女性が仕事を通じて社会に貢献していくことについて、男性に劣るものは何一つありません。17年7月、業務効率化・高度化計画とデータヘルス改革推進計画を厚生労働省とともに公表しました。前者は既存の業務についてより生産性を高め、高品質のものを作っていこうというもの、後者は国民の健康を守るために、さらに新しい事業分野にウイングを広げていこうと手を挙げたものです。こうしたなかで、職員の半数を占める女性の活躍がなければ、組織としての発展はないと思っています。

社会保険診療報酬支払基金 伊藤理事長
1954年生まれ。愛知県出身。77年名古屋大学農学部卒業。1996年津島簡易裁判所民事調停委員。2003年津島市教育委員会委員。2007年愛知県津島市長(~2014年)。2009年中央社会保険医療協議会委員。2014年国民健康保険中央会常勤監事。2016年社会保険診療報酬支払基金理事長。

――女性の活躍を推進する上での課題は何だとお考えでしょうか。

伊藤:過去のアンケートなどを見ると、女性自身が管理職になりたくないという意識を持っていることが分かりました。また、「スキルがない」「自信がない」といった自己分析も見受けられます。これは組織としての指導の方法が適切ではなかったのかもしれませんし、ロールモデルがいないことも一因だと思います。

 女性自身の意識改革はもちろん、男性にも管理職側として、女性を育てていく意識・風土改革を積極的に行っていくことが非常に大事です。働きがいがあって働きやすい職場にしていくためにはどうしたらいいかということを、18年4月に立ち上げるダイバーシティ推進室を中心に、ぜひ職員の皆さんで話し合ってもらえればと思います。