――理事長ご自身が、女性の力を実感したエピソードがあれば教えてください。

伊藤:これは個人的な感想ですが、管理職に必要な能力で最も大切なものは観察力だと思っています。そして、それはおそらく男性より女性の方が優れているのではないでしょうか。

 私は以前、愛知県津島市というところの市長をしていましたが、その時に高齢者や介護を担当する部署の課長に女性になっていただきました。業務の性質上あまり明るいイメージがない職場で、なおかつ残業も多く、以前はとても暗い雰囲気でした。それが、女性課長が来てからは、大変明るく笑いの絶えない職場に変わったんです。

 なぜかというと、課長がよく観察をしているんですね。新しい職員が来たら「何か不安はない?」と気遣うなど、一人ひとりに適切なアドバイスができる。職場が明るくなるといらっしゃる方々にも伝わるのでしょうか、余計に人が来て繁盛しました。繁盛してはいけないのかもしれませんが(笑)。

 審査支払業務という支払基金の仕事においても、女性の観察力は非常に発揮されるものだと思います。

データヘルス改革への参入には全職員の能力発揮が不可欠

――今、多くの企業がICTやAIを使って生産性を上げようとしています。そうしたなか、ある民間企業では、今まではタフな仕事で女性には無理だと思っていたポジションが、働き方改革に取り組んだ結果、労働時間が適正になり、女性にもできることが分かったそうです。先ほど伺った業務改革が進むと「管理職像」が変わり、女性もより手を挙げるようになるのではと感じました。

伊藤:おっしゃる通りです。今回の改革のなかでは、ICTのさらなる活用を進め、AI活用の基盤を作っていくことをうたっています。そうした点やもともとの職員の男女比を考えると、これから女性活躍のロールモデルになっていけるような企業としての素地があるといえるかもしれません。改革の1つとしては、支部の業務の統合に関する実証テストを18年に行う予定です。私どもは社会保険診療報酬支払基金法に基づき、47都道府県に支部と審査委員会を置くことが義務付けられています。そのため、実現性は法律の改正次第の面もありますが、可能な限り最大限の工夫をしていこうと思っています。採用についても現状は総合職のみですが、エリア職と総合職といった形を取ることも視野に入れています。

――業務改革、組織改革と連動しながら、より働きやすい環境を作っていくと。

伊藤:はい。加えて厚生労働省のデータヘルス改革への参入は全く新しいことへの挑戦になりますので、すべての職員に能力を発揮してもらうことが不可欠です。

 国民の健康・医療・介護に関するビッグデータを連携させるということを考えた時に、新しい組織を作るよりは、私どものスキルやすでにある組織を生かしてもらった方が、国にとってもリーズナブルにできるのではという自負は持っています。採用されるためには、国内最高レベルのセキュリティを備えるなどいくつかの条件はあると思いますが、国民の健康を支えるという新しい使命に向かって、支払基金としてぜひ貢献していければと思っています。