役立つ情報満載のダイバーシティ小冊子が好評

――女性が部門長になって、すぐにこのような形で成果が現れたのですね。

西條:「女性が」ということより、彼女たちはそれまで新事業推進に関わってきましたし、専任で新事業開発をやる意欲があったから結果を出せたのだと思います。

――成果を出したということで、本人の意識や会社全体の意識はどう変わりましたか。

西條:2人は、実績が評価されて達成感を持てたと思います。現在はじゃんけんだけでなく、画像認識がいろいろな形で商品化の直前まで進んでいて、各方面から「こんなことできませんか」と問い合わせもあります。そのたびに彼女たちが出ていくので、やりがいを感じているでしょう。

 この件がテレビで紹介されたことで、他の社員も、「観てたよ」と声をかけられるなど、誇らしい気持ちになったということを聞きました。

 それともう一つ、昨年末に素晴らしいものができました。『ダイバーシティ&インクルージョンブック』です。これはダイバーシティだけでなく、子育てや介護など、男女問わず誰でも役に立つ情報が満載の冊子です。例えば「妊娠した時」のページなどは、部下の女性が妊娠した時の対応を知るために、男性が読んでも参考になるわけです。また「イクボスのすすめ」のページでは、部下に対するイクボスワードも具体的に書かれています。

『ダイバーシティ&インクルージョンブック』は女性のみならず男性も参考になる内容が好評。

――デザインが親しみやすいですね。今、社内報などもデジタル化されているところが多いのですが、広い世代に役に立つ情報が紙媒体でまとまっているというのは、なかなかないのではないでしょうか。

西條:ええ。装丁は社内報のテイストに合わせています。この冊子はダイバーシティ推進の担当者から「どうしても作りたい」という要望があり、24ページの大作を、熱い思いで作ってくれました。当社のグループ会社トップの評価も高くて、私も鼻高々ですよ。

――以前、社長は「女性の活躍推進は上司の意識改革に関わっている」と指摘されていましたが、こちらの方の改革は進んでいますか。

西條:実は面白いことがありましてね。2017年にハラスメントに限らない「何でも相談窓口」を作ったところ、問い合わせが倍に増えたのです。相談の内容はもちろんハラスメント相談もありますが、意外なことに制度に関する問い合わせが多かったのです。「家族を介護することになったのだけど、そういう時に対応する制度はありますか」や「妻が妊娠したが、どう対応したらよいか」など。当社の制度に興味をもってくれて、会社に頼るというか、「なんとかしてくれるのかな」と思ってくれたのは大きな変化です。

 ある時、社内で女性だけの集まりがあった時に、「子供が欲しい」という女性が、社内の制度を先輩から聞いて泣き出してしまったという話を聞きました。「子供が欲しい」時に活用できる制度を知らなかったことを残念に思ったのと同時に、女性だけの場でそういう話を聞けたことへの感動があってのことだと思います。

 そんな状態だったので、制度の問い合わせがあること自体が進歩だと思っています。

――社員の悩みや葛藤をいかに会社が拾うかが大事かということですね。

西條:以前、外部カウンセリングの先生に「それぞれの人が自分のことをしゃべる場をいかに作るかが大切だ」と言われ、まだまだやれることはあるという気がしています。「声を上げない人たち」の声をどう拾うか。難しいけれど手分けしてでもやっていかないと、と感じています。

 もともと当グループは、社内コミュニケーションには非常に投資をしている会社です。「飲みニケーション」、最近は「茶飲みケーション」などといいますけれど、継続してやっていくと同時に、やり方を工夫することも必要です。

 例えば上司1人に部下5人が囲んでノーアジェンダで会話をする時、コミュニケーション能力の優れた上司なら、5人それぞれの話を引き出せるけど、そのスキルがないと自分のことをしゃべって終わり、になってしまいます。これはまずい。上手な人に一肌脱いでもらって何回かやってもらうことも必要かもしれません。

 依然として「仕事は絶対的なバリューがあるもの。他のことは寄せ付けないぞ」という人もいる一方で、「そうじゃないよ。自分には生活があるのだから、バランスを取らなくちゃいけない」と思っている人もいる。後者の声は、少数でも大事にしていく必要があると思います。男性で育児休暇を取ることも、草の根のように少しずつ広がってほしいですね。