――女性のキャリア意識は変わりましたか。入社3年目の女性対象のキャリアセミナーでは、女性の昇進意欲が高まったと伺いました。

西條:キャリアセミナーは「入社3年目の女性が自分自身のキャリアをさらに豊かにしていくための自律型キャリアビジョンを見いだす」ことが目的です。ロールモデルとなるような女性の部長や課長がパネリストとして、自身の経験を語る時間がありました。そうした話を聞くと、「もうちょっと頑張ろう」とか「私にできるかな」などと感じてくれたのではと思います。また、セミナーの最後に、上司からの手紙を参加者がサプライズで読むという時間があり、上司の自分への期待に感動して涙ぐむという場面もありました。

入社3年目の女性対象のキャリアセミナーでは、女性の。昇進意欲が高まるという成果があった。

所帯を持つ全社員に「働き方改革への意見」を求める手紙を送る

――働き方改革の成果はどうですか?

西條:残業時間は、昨年に比べて平均1~2時間減っていて、数字上の成果は出ています。部署やプロジェクトによって事情が違うので、残業時間削減のために何ができるかをそれぞれに考えてもらってきましたが、それがようやく奏功したのかもしれません。

 実は去年の3月に所帯を持つ全社員の自宅にお手紙を出しました。1000通くらいですかね。「日立グループは働き方改革に取り組んでいます。もし配偶者の働き方について、疑問やご指摘があればこのアドレスにメールをください」という内容です。10通ぐらいお返事をいただきましたが、「働き方改革をしているなんて思えません!」など、どれも非常に厳しいご指摘でした。

 実態をいかに把握するかが課題で、残業時間の数字が下がっただけで喜んではいけないと思っています。

――日立グループではT&L(タイム&ロケーション)フリーワークも進めていますね。

西條:はい。サテライトオフィスの数も増えてきましたし、自宅で仕事をする社員もいます。ただT&Lも「できる・できない」については、個々のケースを考えて対応しなければいけないですね。例えば当社の社員3人がA社で仕事をする場合、「その3人はどういう人で、A社の始業時刻は何時で、お昼は何時からで、社員食堂は使えるのか、近所に食べるところがあるのか」といった細かいことも洗い出して判断するということです。できないところに「やれ」と言ってもフラストレーションが溜まるだけです。

――女性活躍推進と働き方改革について2019年の施策は?

西條:女性活躍推進については、いい成果が出ているので、AIだけでなく他の分野にも挑戦してもらいたい。そして女性に責任のあるポジションに就いてもらう環境をさらに作っていきたいです。周りの男性も協力してね。

 ただ、女性を区別し過ぎてもよくない、という話もあります。ダイバーシティの話も女性がメインになりがちですが、強調し過ぎない進め方が大事だと思っています。

――社員の働きがいについては、どうでしょうか。

西條:方向を見失っているような部署があれば、直接対話して「ミッションは何だっけ?」という話をしています。「働きがいがない」「惰性で仕事している」という社員も残念ながらいるのも事実なので、そういった社員にも対応するということです。

 今年の1月から「社員幸福度」というキーワードを使っています。「社員幸福度を上げたい」そして、「社員幸福度を測るKPIを募集します」って、年初のメッセージで書いたところ、2、3意見が出てきました。

――社員「満足度」ではなく、「幸福度」というのがユニークですね。

西條:「気持ちが幸福なら仕事も生活もうまくいく」という、それだけなのですが、幸福度を心の在り方を測るバロメーターにするといいかなと思います。「幸福度」を上げるために何かをするわけですから。

 いろいろなことすべてが、そこにつなげられるような気がしています。

麓 幸子(ふもと・さちこ) 日経BP社 日経BP総研フェロー
麓 幸子

1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。17年日経BP総研マーケティング戦略研究所長。18年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。