子連れで2年間スウェーデンに赴任、その経験から分かったことは

――最後に、ワークライフバランスに関しては、転勤もテーマの一つになってきます。特に女性はキャリア形成の上で転勤をネックに感じる人も多いです。本日は、子連れで2年間スウェーデンに赴任された野上麻理コマーシャルエクセレンス本部長も同席しているので、ぜひ経験談を伺いたいです。

野上本部長(以下、野上):営業職が多い医薬品業界においても、転勤問題は女性がキャリアを伸ばしていく上で直面する壁の一つです。私も家族との話し合いを重ねる中で、何度か転勤の話を断ったのですが、その末に「今ならベストかな」というタイミングが来て、そのときに会社がチャンスをくれました。

 スウェーデンに赴任して一番初めにカルチャーショックを受けたのが、ワークライフバランスが驚くほど進んでいたことです。日本のアストラゼネカでは、毎週金曜日を2年前からハッピーライフフライデーとして、夕方4時退社を推奨することを続けています。私自身、ワークライフバランスに関してはプロだと思っていました(笑)。ところがスウェーデンでは、金曜の4時なんて会社に誰もいません。そもそも毎日5時にはほとんどいないんです。

 スウェーデンでは夕方は家族のための時間であり、一緒に夕食を取らないことなど人間としてありえないという文化です。なおかつ冬の日照時間が短い国なので、夏休みは2カ月連続で取ります。何よりすごいと思ったのが、それだけメリハリをつけて働くことを可能にしている、自律性の高さです。

 グローバル企業で働いていて夏に2カ月もいないというのは、その人によほど付加価値がないと、海外のチームから「一緒に働きたくない」と思われてしまいます。でもスウェーデン人たちは専門的な価値が高いため、きちんと周囲から認められて仕事をしている。

 グローバル企業にいるとはいえ、それまでこんなに多様なバックグラウンドの人と働くことはなかったので、自分のキャリアにおいてものすごく視点が広がりました。本当に行ってよかったと思います。

WLIで講演する野上本部長
WLIで講演する野上本部長。2年間、子連れでスウェーデンに転勤した経験を持つ

――スウェーデンでの経験を経て、必要なことは何だと思いますか。

野上:やはり自律性だと思います。帰国して思ったのが、日本人はどうしても「みんなが帰るから自分も帰る」という意識で働いているということ。ワーキングマザーに生産性の高い人が多いのは、時間に対する意識が高いからなんですよね。全員の意識が高ければ、みんながメリハリのある働き方をするようになる。目的は早く帰ることではなく、きゅっと短い時間の間に、全ての仕事をベターに終わらせることなんです。

麓 幸子(ふもと・さちこ) 日経BP社 日経BP総研フェロー
麓 幸子

1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。17年日経BP総研マーケティング戦略研究所長。18年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。