建設技術研究所は2015年12月に「ダイバーシティ推進計画」を策定し、翌年4月よりダイバーシティ推進室を新設。ダイバーシティ推進と同時に、働き方改革への取り組みを進めている。この業界の積年の問題である「長時間労働」を削減することが喫緊の課題であり、クライアントである官公庁も一緒になって解消していく取り組みが不可欠だという。その働きかけを率先して行う、建設コンサルタント業界のパイオニアカンパニーである同社は、働き方改革をどう進めていくのか。取締役常務執行役員であり、ダイバーシティ推進担当も兼任する渡辺宏一氏に話を聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 日経BP総研フェロー、文=船木麻里)

社長と役員含め、23人が「イクボス宣言」

――働き方改革への取り組みとして、さまざまな施策をしていますね。昨年はイクボス宣言もしました。

渡辺取締役(以下、渡辺):そうですね。きっかけは2016年7月にNPO法人ファザーリング・ジャパンの代表・安藤哲也さんにお越しいただき、社長の村田が「イクボス企業宣言」をしたことです。イクボスの重要性を認識して、自らイクボスとなって組織を牽引していくことが目的です。その後、17年9月に同じく安藤さんによる役員向けのイクボス講演会を開催しました。その際、執行役員を含めた23人がそれぞれにイクボス宣言をしたんです。

渡辺宏一取締役
1990年4月建設技術研究所入社。2006年経理部長。09年管理本部副本部長。12年執行役員。16年常務執行役員。17年取締役常務執行役員、管理本部長(現在)

――そもそも、建設技術研究所が働き方改革を進めているのは、どのような背景からなのでしょうか。

渡辺:弊社のクライアントはほぼ官公庁ですが、単年度予算で動いていることもあって、1~3月までが工期が集中して非常に忙しいのです。繁忙期には長時間労働が当たり前みたいな職場環境が長い間続いていました。これは弊社に限らず業界全体の問題です。働き方改革では、まずその長時間労働を解消しようということです。

 実は弊社は10年前から「働き方改革」と称して取り組んでいました。出産・育児をする社員はなるべく自宅近くのオフィスで仕事するなど、社員が働きやすい職場環境にするため、実効性のあるものはどんどん試行しました。「制度はあとから作ればいい」と取り組んだのが始まりですね。

 10年前の報告書(平成21年3月「1300人の働き方改革総括報告書」)にも在宅勤務やサテライトオフィスの試行、フレックスタイムの試行など、時短的なことが多く報告されています。

――10年前ですと、「働き方改革」という言葉もまだあまり聞かれていなかった頃です。それから10年たったわけですが、成果はいかがでしょうか。

渡辺:どうしても工期延長や仕様変更もある業界なので、会社が独自に動いてもなかなか難しいところがありますね。我々の意識改革も、当初の思惑ほど進んでいないのが正直なところです。

 ですがここ数年、政府も働き方改革を声高にいうようになり、一番のクライアントである国交省も、弊社の要望に対応してもらえるようになってきました。

 従来は「金曜日に依頼、締め切りは月曜」というような急な依頼もあったのですが、それはやめて、さらにノー残業デーである水曜日は夕方以降には電話をかけないようにするといったいわゆる「ウイークリー・スタンス」への取り組みについても浸透してきました。