――懇談会に出席する若手はどうやって選ぶのですか。

伊藤:5年後、10年後にリーダーとして活躍してもらいたい30~40代の中から、各本部長にメンバーを推薦してもらいました。階層的には次長クラスまでで、当社の将来を担う人財です。次世代リーダーが集まって話すのはとても効果的でした。当社には大きく分類すると営業セクション、開発セクション、情報セクションがあります。それぞれ自分たちの主張がありますが、話しているうちに「意外にみんな同じこと考えていたんだ」「こういう横のコミュニケーションは大事だね」など、大きな気づきがあったからです。

 加えて「トップの経営方針を“直接”聞けた」というのもよかったようです。当社は運用やメンテナンスというどちらかというと地味で守りの事業部門もあり、しかもミスは許されないというところで、お客様との信頼関係を築き上げてきました。そこは守りつつも、一方で若手は新しいことをやりたいというのがあります。社長がどんどん新しいことにチャレンジしてほしいと言ったことで、モチベーションが上がる面もありました。

――具体的にはどのような施策を打っていますか。

伊藤:BI(business innovation)委員会を立ち上げ、若手だけで商品企画やモノづくりにチャレンジする場を作ったり、社長が塾長となり、新ビジョン策定の際に金融や技術の未来を大胆に予測・研究する「共創みらいアカデミア」を発足したりするなど、未来のリーダーを育て、一人ひとりの能力や経験を生かす新たな取り組みを始めています。

 また、「QUICK Smart Work プロジェクト」の施策としては、全社を挙げた「断捨離運動」を初め、限定正社員制度の施行、テレワークの推進、健康経営の推進導入などが挙げられます。

4つの断捨離で新たなワークスタイルを構築する

――「断捨離運動」とはどのようなことでしょうか。

伊藤:社長が「働き方改革の肝」と位置付ける中心的プロジェクトです。社員から「ビルド&ビルドでサービスが増え、仕事量も増えている。スクラップ&ビルドを推進してほしい」という意見が出ました。そこで「当社としてはどういう断捨離ができるのか」ということで、個人でも本部別でもいいから全社で断捨離案を出すことになりました。それが全社で500強も集まったんですよ。

 最終的には、「全社横断のもの」と「部門横断のもの」に分け、全社横断のものについては、本部長、役員に優先順位の高いものを選んでもらい、4つに絞りました。それが「サービスの断捨離」「セールス事務作業の断捨離」「開発作業時間の断捨離」そして「業務のIT化」ということになりました。

――それぞれ説明していただけますか。

伊藤:「サービスの断捨離」というのは採算が合わないサービスや見られていないコンテンツを思い切って捨てていくということです。「セールス事務作業の断捨離」というのは、営業マンの事務作業がとても多くて煩雑なので、IT化することで営業に集中してもらうということです。そこにはERP、RPA化も入っています。「開発作業時間の断捨離」というのは、当社はこれまで様々な外注先があり開発手法や、作業手順がシステムごとに違っていたりしました。それらを社員主導で標準化し、すべての工程に社員が関わり、さらに一部作業を自動化するなど効率化していこうということです。その他「業務のIT化」は、管理部門を中心に業務のRPA化を推進するものです。

――つまり開発の作業工程を標準化して業務の内製化をするということですね。働き方改革を進める企業は外注化を推進していくというケースも多いですが、QUICKがあえて内製化を進めるのはなぜですか。

伊藤:内製化を進めることで、エンジニアが直接お客様の要望を聞き、スピーディーにお客様の課題を解決することができると考えるからです。またITのスキル、ノウハウを社内に蓄積でき、社内業務の中で人手で行っている業務をシステム化、自動化する際に大きな力になると思います。

――それは例えば川上から川下まで全部できるような人材を、ということなのでしょうか。

伊藤:そうですね。メーカー任せではなくて、すべての工程が分かるIT人財を育成しなくてはいけないということです。それは自動的に社員のスキルアップにもなります。現在、若手社員を中心に、e-ラーニング、プログラミング等の研修を進めています。

 この断捨離運動は1月から始めていますが、今は「どの事業がサービスの断捨離の対象か」をプロジェクトチームが洗い出しているところです。

――断捨離運動が経営の構造改革につながるということですね。

伊藤:そうです。働き方改革を通じて、ムダのない働く環境を創り出し、社員の健康と働きがいを実現し、高い付加価値創造・生産性向上・収益の拡大へつなげていく、全社を挙げた経営の構造改革です。断捨離運動などゼロベースで仕事の棚卸しを行い、生産性を高めるQUICKの新しいワークスタイルを全社で創り上げるのが目的です。

 また、働き方改革の施策として、4月から「限定正社員制度」を導入しました。これは、社員の多様な働き方を実現し、優秀な人財の離職防止と雇用確保につなげていく施策です。労働条件の一部(時間、場所、業務内容)を限定する雇用形態で、育児や介護に加え、自身の傷病など仕事上の制約が発生した場合でも、個々人の状況に合わせた働き方が可能となります。