2018年1月、近畿・中国・四国・九州地方を営業地域とするコカ・コーラウエストと、首都圏と東北南部、東海地方を営業地域とするコカ・コーライーストジャパンは統合し、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスが誕生。その事業会社として、コカ・コーラ ボトラーズジャパンが新たなスタートを切った。世界に250以上あるコカ・コーラボトラーの中でアジア最大の規模となった同社だが、まだまだ女性活躍の面では課題も多いと代表取締役社長の吉松民雄氏は言う。女性活躍、ダイバーシティ推進をさらに加速させていくための施策、社長の思いと意気込みを聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 日経BP総研フェロー、文=船木麻里)

ダイバーシティ経営は「多様性と多面性」を重視

――吉松社長は長い間コカ・コーラの製造・販売会社に勤務し、食品業界でキャリアを積まれましたが、その中で感じる女性活躍の必要性について教えてください

吉松:私がこのビジネスに携り、もう50年になるのですが、入社した当時、扱っているブランドはコカ・コーラとファンタだけ。ビンと缶で6~7品種という時代です。当時は圧倒的な男性社会で、女性の仕事といえばセールスマンの売り上げを精算書にまとめたものを検算し、入金すること。営業所の中に女性は多くて3人ほどでしたね。会議では、記録とか管理職のサポートをする女性スタッフはいても、意見を言ったり参画したりといったことは全くありませんでした。

 私は当時、近畿コカ・コーラにいました。あるとき大株主であるキリンの本社に行き、社内の様子を見る機会があったのですが、そのとき「うちの会社とはずいぶん違うな」と感じました。あらゆるところで女性が活躍していたからです。ある意味で衝撃を受けました。そのあたりから女性社員の存在を意識するようになり、考え方も変わりました。今から30年くらい前かと思います。

代表取締役社長 吉松民雄氏
1969年近畿コカ・コーラボトリング入社。2000年同取締役。04年同常務取締役。06年3月同専務取締役 同専務執行役員。同7月コカ・コーラウエストホールディングス取締役 専務執行役員。07年近畿コカ・コーラボトリング代表取締役社長。09年1月コカ・コーラウエスト副社長。同3月同代表取締役。10年同社長。17年コカ・コーラ ボトラーズジャパン代表取締役社長(現任)。18年コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス代表取締役社長(現任)

――男女雇用機会均等法施行が86年ですが、80年代後半から90年代初めでしょうか。

吉松:ええ。そこから少しずつ、女性が事務方だけでなくマーケティングや営業、企画部門に入ることも増えてきました。そんな変遷がありましたが、今年1月にコカ・コーラ ボトラーズジャパンに統合してもなお、女性は定量的計画比で言えば、まだ多くの目標に対して不足しています。

 ただ考え方とか取り組む姿勢、環境整備はずいぶんと変わってきたと実感しています。それは当社が1兆円企業になり、コカ・コーラ ボトラーとしてアジアでトップ、世界で3位というポジションになって、さらにグローバルのシャワーを浴びるようになったこともありますね。今は執行役員の女性が3人いて、育児をしながら仕事を務めあげているというところでは、他の女性社員の憧れになっています。ただ、リーダー比率、管理職比率もまだまだ期待値ほどではありません。ですから「今年がダイバーシティ元年」として挑戦している、というのが正直なところです。

――女性を含むダイバーシティ経営がなぜ必要なのか、改めてご意見を聞かせてください。

吉松:今、世の中は急速な変化をしていて、お客様の購買行動も、世代構成も、さらに国の政策もどんどん変わっています。その中で企業は生き残っていかなくてはいけません。私たちのような消費財メーカーは、お客様のターゲットは半分以上が女性。だから女性に対する心構えや商品づくりなどを間違うと競争に生き残れないんです。

 お客様の「個」がどんどん分散し、一つの物差しで測れなくなってきているので、対応すべき「解」に突き当たることがなかなか難しくなっています。そんな不透明な時代の今、過去にない課題を突き付けられたとき、これまでのように学歴や経験、常識、あるいは前例といったもので解決できる確率はずっと落ちてきていますし、仮にそれで解決しても「え?」という結果に終わることが急増しています。

 私が今、自信を持っていえることは、それだけ「個」が分散していく時代には、「多様性と多面性」で解決していかないと、対処し得ないということ。いろんな意味で多様性と多面性を意識することで解に近づく確率を上げていくことが、ビジネスで絶対にやらなくてはいけない一つの手法だということです。